個人再生により再生計画を組んでも、様々な事情により再生計画通りの返済が難しくなるということがあります。
このような時にハードシップ免責という制度を使うことで、再生計画の残りの借金を免除することができます。
しかし、ハードシップ免責を受けるための要件は厳しく、ローンを組んでいる自宅を失うというデメリットもあります。
ここではハードシップ免責とは何か、ハードシップ免責の要件、デメリット、手続きや費用などをご紹介いたします。
個人再生の再生計画が認可され計画通りに返済していてもリストラ、事故、病気などで返済できなくなることがあります。
ハードシップ免責とは、このような予想不能な事態が発生し再生計画の実行が困難になった時に残りの借金の支払い義務を免除する制度です。
ただし、ハードシップ免責を認めてもらうためには厳しい条件があります。
ハードシップ免責は個人再生後に返済できなくなった際の救済制度ですが、実際には東京地裁や大阪地裁でも年間数件しか利用されていません。
利用件数が少ないのは、ハードシップ免責を受けるための条件が厳しく、利用できるケースが少ないからです。
ハードシップ免責を受けると借金の残りをすべて免除してもらうことができますが、裁判所に認めてもらうための要件はかなり厳しく、次の4つを満たす必要があります。
再生債務者がその責めに帰することができない事由というのはやや難しい表現ですが、再生計画に基づく返済をしていた債務者本人には責任のない事態が発生し、返済ができなくなったときのことを指します。
具体的には、病気、ケガなどにより就労ができなくなった時、リストラにより収入を失った時、個人事業主などでは天災により設備が失われ業務継続ができなくなった時などです。
再生計画が実行できなかった場合でも一時的な収入減少や出費があったとしても再生計画を変更し、支払い期間を延長させることで計画が実行できることもあります。
そのため、ハードシップ免責を受けるためには収入が長期間なくなる、再就職が難しいなど、将来にわたり返済が極めて困難と判断されるだけの問題が生じている必要があります。
個人再生を行って、すぐにハードシップ免責を認めてしまうと債権者側には一方的な損害となります。
そもそも借金は返すべきものであり、個人再生により返済しやすい状況ができていたわけですから、ハードシップ免責が認められるにはある程度の返済したという実績が必要です、。
民事再生法235条では、この基準を再生計画の返済金額の4分の3以上の返済が終わっていることとしています。
債権者の一般の利益に反するものでないこと、とは清算価値保障の原則のことです。
個人再生を行う際には自己破産をした場合を想定し「自己破産により債権者に配当される財産相当よりも多い金額(清算価値)」を考慮して再生計画を汲みます。
個人再生での返済総額は法律で定められた最低弁済額か清算価値のどちらか多い方になるのです。
これを清算価値保障の原則と呼び、清算価値以上の返済をしていなければハードシップ免責を受けることはできません。
個人再生を行い、返済ができなくなったのでハードシップ免責を検討した。しかし、ハードシップ免責の要件を満たしていない場合にはどうなるのでしょうか?
もしハードシップ免責を受けられない場合には自己破産をすることになります。
再生計画が実行されなかった場合には、債権者は裁判所に再生計画の取り消しを求めます。再生計画の取り消しが認められると個人再生により圧縮されていた借金が元に戻ります。
再生計画が実行できなかった債務者が借金を返済できることはまずありえませんので、事実上、個人再生がうまくいかなかった場合には自己破産をするしかなくなります。
債務整理には個人再生と自己破産以外にも任意整理と特定調停がありますが、どちらの手続きでも解決することは難しいでしょう。
再生計画通りに返済できなくても要件さえ満たせばハードシップ免責により借金の残りは免除されるとなるとメリットが大きいように思えますが、住宅ローンを組んでいた場合には自宅を失うことになるという大きなデメリットがあります。
自己破産や個人再生(給与所得者等再生)も7年間は行えないなどの制限もあります。
個人再生のメリットに住宅ローンを組んでいる自宅を残したまま手続きが進められるというものがあります。
借金の返済が苦しくなった場合には任意整理を検討しますが、任意整理でも対応しきれない場合にはローンを組んでいる自宅があるかどうかで判断し、自宅がない場合には自己破産、自宅があり残したい場合には個人再生を行うことが多いです。
しかし、ハードシップ免責により住宅ローンの残債も免除されますので、抵当権を持っている債権者は自宅を競売などで処分することになります。
自宅を残すために個人再生を選択したのにハードシップ免責を受けたために、結果的に自宅を失うことになるというリスクがあります。
自己破産ができる条件に7年以内にハードシップ免責を受けていないこと、とあります。
つまり、ハードシップ免責を受けると、その後、借金をして返済が苦しくなったとしても7年間は自己破産ができません。
ただし、債務整理ができないわけではないので、返済に困った場合にはすぐに弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。
債務整理に回数制限はありませんので、ハードシップ免責を受けた後に、再度、個人再生を検討することもあるかもしれません。
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類がありますが、このうち、給与所得者等再生はハードシップ免責後7年間は行うことができません。
自己破産も7年間はできないことは前述している通りですので、ハードシップ免責後に借金返済に困った場合には任意整理や小規模個人再生を検討しましょう。
ハードシップ免責を受けるためには、個人再生を行った裁判所に申し立てることになります。
その際に裁判所に提出する書類は2種類です。
この書類をもとに裁判所は免責にするに値するのかどうかを判断します。
この手続きにかかる費用は1,000円程度ですが、「返済できないことを証明する書類」を個人で作成することは難しいことも多く、弁護士や司法書士に相談することをおすすめいたします。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。