任意整理と特定調停の違いと共通点

借金整理の方法に任意整理と特定調停があります。任意整理は、弁護士・司法書士が債務者の代理人として各債権者と和解交渉を行うものです。一方で特定調停は裁判所から選ばれた調停委員が介する中で弁護士・司法書士が債務者の代理人として(もしくは本人が)各債権者と和解交渉を行います。

任意整理と特定調停の違いやそれぞれの方法が適している人を理解することで、任意整理と特定調停のどちらを選択すればいいのかが明確になります。

司法書士法人杉山事務所が、任意整理の共通点と違い、任意整理に向いている人、特定調停に向いている人についてわかりやすく解説します。

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任意整理と特定調停の共通点

任意整理と特定調停はともに借金整理の方法で2つの共通点があります。

  • 交渉していく内容
  • 債権者を選べること

任意整理と特定調停では、各債権者から開示された取引履歴から利息制限法にもとづいて返済額を算出し、3年~5年にかけて返済する内容で和解に向けて交渉します。

加えて、任意整理と特定調停ともに対象とする債権者を選べます。例えば、保証人がついている債権者を対象から外すことで保証人に迷惑をかけずに借金整理ができたり、自動車ローンを対象から外すことで自動車を引き上げられることなく返済を進められたりするのです。

任意整理と特定調停の違い

任意整理と特定調停の違いは次の7つです。

  • 取り立て停止時期
  • 利息の取り扱い
  • 過払い金の取り扱い
  • 強制執行の取り扱い
  • 費用
  • 時間と手間
  • 成功率

7つの違いを知ることは、自分が任意整理と特定調停のどちらを選ぶべきかの判断材料となります。

取り立て停止時期

任意整理・特定調停を弁護士・司法書士に依頼した場合、依頼後すぐに弁護士・司法書士が各債権者に受任通知を送り、取り立てが停止します。なので状況によりますが依頼してから数日で取り立てが停止されるのです。

一方で、特定調停を自分で行う場合には書類を用意した上で裁判所に申し立てなければなりません。申し立てが受理された後に裁判所が各債権者に申立受理通知を送ることで、取り立てが停止します。特定調停では裁判所を介するので、任意整理よりも取り立て停止に日数がかかるのです。

取り立て停止時期が早いか遅いは、債務者への精神的な影響に関わってきます。早く取り立てが停止すればするほど、債権者からの電話や書類におびえることなく落ち着いて借金整理に取り掛かれるのです。

利息の取り扱い

任意整理では多くの場合、将来利息と経過利息がカットされます。一方で、特定調停では将来利息はカットされるものの、経過利息はつけたまま和解が成立する場合が多くなるのです。

経過利息は最後の返済日から和解成立日までに発生する利息です。例えば、借金が100万円(年利15%)で最後の返済日から和解成立日まで90日だとすると、経過利息は3万6986円となります。経過利息のカットの有無は借金額に大きく影響するのです。

過払い金請求の取り扱い

任意整理では債権者に受任通知を送ると同時に取引履歴の開示請求を行いますが、そこで過払い金が発生していると分かれば、和解を進める中で過払い金請求をしていきます。なので最終的に過払い金を含めた返済計画が立てられるのです。

一方で、特定調停では過払い金が発生していると分かっても、その特定調停の場では過払い金請求はできません。過払い金があれば調停とは別に、債権者と交渉をしたり裁判をしたりする必要があります。

特定調停後の過払い金請求の可否は調停調書や17条決定の内容による

特定調停後に過払い金請求ができるかできないかは、調停調書(和解成立の際に裁判所が作成するもの)や17条決定(調停が成立しない場合に裁判所が債権者と債務者の公平を考慮して職権により決定すること、調停と同じ効力を持つ)の内容によります。

調停調書や17条決定に「貸付金債務は存在しない」とある場合には過払い金請求が可能ですが、「互いに債権債務が存在しない」との清算条項がある場合には過払い金請求ができるかできないかの判断は難しくなるのです。

平成27年9月15日の最高裁判決では、過払い金が特定調停時に発生している場合に清算条項は過払い金請求権を消滅させるものか否かについて争われました。そこでは「清算条項は過払い金請求権を消滅させるものではない」と判断されました。つまり、この判決から調停調書や17条決定に「互いに債権債務が存在しない」との清算条項があっても過払い金請求ができると解釈できるのです。ただし、特定調停での過払い金の取り扱いについて自分で判断するのは難しい部分でもあるので、弁護士や司法書士に相談して適切な対応を取りましょう。

強制執行の取り扱い

債権者からみた借金回収方法として強制執行による財産の差し押さえがあります。

任意整理で和解通りに支払ってもらえない場合には、債権者は裁判を起こして判決を得なければ強制執行を行えません。

一方で、特定調停では調停調書を債務名義として強制執行を行えます。つまり裁判・判決の過程を経なくても強制執行ができるのです。

ただし、債務者からみた場合任意整理で強制執行をされて停止したいときには債権者に対して交渉で依頼するまでにとどまります。特定調停で強制執行をされた場合には裁判所に停止の申し立てを行えるので、その申し立てが受理されれば停止できるのです。

そもそも約束通りに借金を返済すれば債権者から強制執行をされることはめったにありませんが、万が一返済が厳しくなった場合のことを考えて、任意整理と特定調停では債権者の対応が異なってくることも視野に入れなければなりません。任意整理では債権者から一括請求をされた場合には、再和解や追加介入、個人再生、自己破産を検討することになり、いきなり強制執行に進むケースは少なくなります。一方で、特定調停では支払いが遅れると一括請求されたり強制執行されたりします。裁判を起こさなくても強制執行ができるので、強制執行がされやすいとも言えるのです。

ただし、どちらにせよ返済が厳しくなった場合の対処法は債権者によって異なるので、弁護士・司法書士に相談して適切な対応を取りましょう。

費用

任意整理を弁護士・司法書士に依頼する際には1社あたり2万~5万円程度必要です。一方で、特定調停を自分で行う場合には、申立手数料(1社につき500円)や郵便切手がかかるのみなので、任意整理よりも費用を安く抑えられます。

なお、特定調停を弁護士・司法書士に依頼する際には申立手数料や郵便切手の他に別途弁護士・司法書士費用が必要となります。

借金整理をする上で費用は重要なポイントです。返済に追われている中で費用を捻出しなければならないので、特に任意整理・特定調停を弁護士・司法書士に依頼する際にはいくら費用がかかるのか、そしてどのタイミングで支払わなければいけないのかをあらかじめ弁護士・司法書士に聞いておきましょう。

時間と手間

任意整理はあくまで弁護士・司法書士と債権者との交渉にとどまるので、弁護士・司法書士と債務者が契約を交わせば任意整理を開始できます。債務者は和解内容に同意したり、書類に署名したりすること以外の作業は弁護士・司法書士が行うので、手間をかけずに進められます。

一方で、特定調停は裁判所に申し立てをする必要があるので、その分そろえなければならない書類が多かったり、自分で行う場合には裁判所に最低でも1社あたり2回は出向かなければならなかったりするのです。例えば、3社を特定調停する場合には最低でも6回は裁判所に出向く必要があります。この点からも特定調停は任意整理よりも手間と時間がかかると言えるのです。

成功率

任意整理では法律の専門家である弁護士・司法書士が債権者と交渉するので、債務者の状況や債権者の特徴を加味した上で和解に向けて交渉を重ねます。なので、成功率でいうとほとんどの場合で3年~5年で返済していけるだけの和解内容で合意できるのです。

一方で、特定調停では調停が成立するのは申立件数の3%程度で、その他は調停不成立や調停に代わる決定、取下げなどがなされています。自分で特定調停を行い成立しなかった場合には、弁護士・司法書士を探して任意整理や個人再生、自己破産に進むことも考えなければなりません。成立しなかった場合には取り立てが開始されるので、より適切な対応が求められるのです。

任意整理と特定調停の比較表

以上7つの任意整理と特定調停の違いを比較します。

任意整理 特定調停
取り立て停止時期 依頼後数日 裁判所に申請後
利息の取り扱い 将来利息と経過利息がカット 将来利息のみカット
過払い金の取り扱い 同時にできる 同時にはできない
強制執行の取り扱い 停止はできない 裁判所で受理されれば停止できる
費用 1社あたり2~5万円程度 1社あたり数千円
時間と手間 弁護士・司法書士と契約すればすぐに開始される、手続きは弁護士・司法書士がほぼ全てやってくれる 裁判所に申し立てるための書類が多かったり、自分で行う場合には裁判所に最低でも1社あたり2回は出向く必要がある
成功率 ほとんどの場合で和解が成立する 3%程度

任意整理が向いている人

任意整理が向いている人は次のような方です。

  • 時間と手間をかけたくない人
  • 過払い金がある人

例えば、平日に裁判所に出向くのが難しい人や債権者とのやり取りをすべて弁護士・司法書士に任せたい人におすすめです。仕事を休んで裁判所に出向くとなると周りに借金整理をしていることがバレる可能性もあります。また、特定調停を自分で行う場合には調停委員が間に入って交渉をしてくれますが、調停委員はあくまで中立の立場であり債務者の交渉をリードしてくれるとは限りません。債権者とのやり取りを弁護士・司法書士が行う任意整理を選ぶことで、法律に精通している者として債務者の経済状況に合わせて和解を進めてくれるのです。

加えて、過払い金があれば借金を大幅に減らすことが可能ですので任意整理をすることで借金完済の目途がつくようになります。

特定調停が向いている人

特定調停が向いている人は、費用を安く済ませたい人です。特定調停を自分で行う場合には、申立手数料の500円(1社あたり)や郵便切手がかかるだけなので、1社あたり数千円でできます。

もちろん特定調停を自分で行うとなると自分がやるべきことが多くなり不安になることも考えられますが、それよりも費用を安く抑えることを優先したい人は特定調停を検討しましょう。

迷ったら弁護士・司法書士に相談しよう

任意整理か特定調停で迷った場合には、弁護士・司法書士への相談をおすすめします。相談することで自分の借金状況に合った適切な方法を提案してくれるので、いち早く借金完済のめどを立てられるのです。内容によっては、任意整理や特定調停以外の方法も検討することになります。

司法書士法人杉山事務所では任意整理や特定調停の相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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