「任意整理で借金問題を解決したいけどデメリットが心配」という人も多いのではないでしょうか。
任意整理は他の債務整理よりもデメリットが少なく、比較的簡単に手続きができるため、多くの人に利用されています。
しかし、任意整理にもデメリットはあり、よく理解してから手続きをしないと後悔することもあります。
そこで今回は、任意整理のデメリットやよくある勘違い、任意整理せずに借金を返済する方法などを詳しく解説します。
任意整理は債務整理手続きの中のひとつです。
任意整理では主に以下の手続きによって借金の負担を減らすことができます。
任意整理は個人再生や自己破産よりも手続きが簡単でデメリットが少ないため、最も利用されている債務整理といわれています。
特に、利息の返済で苦しんでいる方には有効な手続きです。
任意整理は比較的利用しやすい手続きですが、以下のようなデメリットがあります。
任意整理をする最も大きなデメリットとしては、ブラックリストに登録されるということが挙げられます。
銀行や消費者金融、カード会社などで借金をする際、依頼者の借金の状況などの情報が信用情報機関に照会されます。信用情報は借り手の過去の借金を知ることができるため、直近で滞納などを起こしている場合、借金の申し込みを断られることがあります。
任意整理をすると、信用情報に任意整理をしたことが記録され、しばらくの間借金ができなくなってしまいます。これをブラックリスト状態と言います。
任意整理の場合、ブラックリスト状態は約5年間続きます。この間は借金や新規クレジットカードの発行、家や車のローン契約はできませんので注意が必要です。
任意整理は個人再生や自己破産と異なり、借金の元金をカットすることはできません。そのため、他の手続きよりも減額幅が小さい債務整理です。
多額の借金を背負っている人の場合、任意整理によって利息のカットはできても、その後の返済は変わらず高額なものになってしまいます。そもそも返済能力がない人は任意整理以外の手続きも検討する必要があるでしょう。
任意整理は利息をカットすることができるため、返済の負担を減らすことができます。しかし、任意整理後も元金を含めた借金は残り、毎月決められた額を返済していくことに変わりはありません。
そのため、任意整理後も毎月返済をしていくだけの安定した収入がない人は利用すべきではなく、手続き時点で無職であったり安定した収入がない人は利用できません。
任意整理は裁判所を介さずに任意で債権者と交渉を行う手続きです。そのため、任意整理の手続きを進め、利息のカットなどをしてもらうためには債権者との合意が必要です。
現在、ほとんどの貸金業者は任意整理に応じてくれますが、一部の貸金業者は任意整理に応じてくれず、任意整理できないケースも発生します。
とはいえ、銀行や大手の消費者金融であれば多くの場合で交渉に応じてくれますので、過度な心配は必要ありません。
任意整理のメリットは以下の通りです。
任意整理では、将来発生する利息をカットして借金の負担を減らすことができます。
利息の負担は思いのほか大きい場合があり、これをカットするだけで毎月の返済が楽になることがあります。
利息の計算式は以下の通りです。
利息=元金×金利÷365(日)×借入期間で計算可能です。
例えば、年利18%で100万円の借金をしている場合、1か月で発生する利息は以下のように計算できます。
100万円×18%÷365日×30日=約1万4794円
毎月3万円返済しているとすると、ほぼ半分が利息の返済に充てられていることになります。
このように、毎月の返済額が少ないと、返済の大部分が利息の返済に充てられてしまい、なかなか完済に至りません。
任意整理によって利息をカットすることで、返済を元金に充てることができるようになり、効率良く完済を目指せます。
任意整理は自己破産などと違い、自分の財産を手放すことなく借金を返済していくことが可能です。
任意整理は対象とする借金を選ぶことができます。例えば、住宅ローン返済中に他の借金がかさみ家計が苦しくなってしまった場合は、住宅ローンは通常通り返済し続けながら他の借金の利息をカットし、月々の返済負担を減らすことが可能です。
ただし、当然その場合住宅ローンの返済は軽減されません。住宅ローンや車のローンなど、生活に必要で手放したくない財産に関する借金だけ任意整理から外すようにしましょう。
借金が滞ると悩まされるのが貸金業者からの督促です。
督促は郵送や電話で行われ、毎日督促が来ると精神的に追い詰められることもあります。
任意整理をすれば、受任通知という手続きの開始を知らせる通知を貸金業者に発送します。
これにより、貸金業者は督促を止め、任意整理の交渉に移ります。
督促を止めて早く借金問題を解決したい場合は、早めに相談してください。
任意整理は個人再生や自己破産と違い、裁判所を介さず直接債権者と交渉を行うため、比較的簡単な手続きで済むというメリットもあります。
個人再生などでは裁判所に申し立てを行うための各種書類が必要になりますが、任意整理であれば弁護士や司法書士が債権者と任意の交渉し、依頼者は条件への合意や署名などの作業だけで済みます。
普段仕事が忙しくて手続きに手間をかけられない人にも優しい手続きです。
通常の任意整理は利息はカットできても元金を減らすことはできませんが、過払い金が発生している場合はその分を元金の返済に充てることができます。
過払い金とは、過去に法律で定める金利を超えて払いすぎた貸金業者へのお金のことです。
2010年6月17日まで、利息制限法の上限金利は年15.0%~20.0%、出資法の上限金利は年29.2%と別々に設定されていました。そのため、利息制限法には違反していても出資法には違反していない「グレーゾーン金利」に基づき、高金利で貸付を行っていた業者が存在したのです。
現在ではグレーゾーン金利は払いすぎたお金、つまり「過払い金」として取り戻すことができるようになっています。
任意整理の際に借金以上の過払い金が見つかった場合は、借金を差し引いた過払い金の残りが手元に戻ってきます。
任意整理は家族にバレずに手続きをし、完済を目指せることも大きなメリットです。
任意整理は弁護士や司法書士が依頼者の窓口となり、債権者とのやり取りをします。債権者との交渉や連絡はすべて事務所を経由するため、直接自宅に連絡が行くことはなくなります。
そのため、家族にバレずにこっそり任意整理をして借金を減らすことが可能です。
任意整理はリスクが少ない手続きですが、他の債務整理と混同されてしまうことがあります。
任意整理に関する主な勘違いとして、
といったものがあります。
しかし、実際には任意整理であればこれらのリスクを回避することができます。
任意整理は事務所が窓口となるため、貸金業者から直接連絡がいくことはなくなります。
また、事務所が依頼者の家族にバレないように最大限配慮を行ってくれるため、家族に知られるリスクは低いでしょう。
さらに、任意整理は職場に提出する書類も特にないため、会社に任意整理が知られることもありません。
誰にも知られずに借金問題を解決することが可能です。
任意整理を戸惑う人の中には、借金の保証人に迷惑をかけてしまうことを恐れている場合があります。
確かに、保証人のある借金を任意整理してしまうと、保証人にその金額分の請求がいってしまいます。
しかし、任意整理では対象とする借金を選べるため、保証人のある借金を除外すれば保証人への影響はありません。
個人再生や自己破産ではこのようなことはできないため、任意整理の持つ強みと言えます。
任意整理をした後に賃貸契約ができないと勘違いしている人もいます。
しかし、一般的に賃貸契約はブラックリスト状態かどうかを判断することはありません。
つまり、任意整理によってブラックリスト状態になっていても、賃貸契約の審査には問題ありません。
任意整理をすべき人は、一般的に以下のような特徴に当てはまる人です。
利息の返済に苦しんでいる人は、任意整理がおすすめです。
例えば、毎月の返済の大部分が利息の返済に充てられている場合、任意整理をすると大幅に完済が近づくでしょう。
一方で、利息の返済以外でも問題を抱えている場合は注意が必要です。
例えば、そもそもの元金が大きすぎて返せない人、利息をカットしても毎月の返済が難しい人は、任意整理以外の手続きを検討する必要があります。
任意整理は家族にバレにくい手続きのため、自分ひとりで借金を完済したい人には最適な手続きです。
借金問題は家族に相談しにくいものです。特に、滞納などをしている場合は家族関係に悪影響が生じるリスクもあるため、できるだけ家族に秘密にしたまま完済したい人も多いでしょう。
任意整理であれば弁護士や司法書士が郵送や連絡手段などに細心の注意を払ってくれるため、安心して返済を続けることができます。
個人再生や自己破産は裁判所を介する手続きのため、裁判所に提出する書類の作成準備や裁判所に行く手間が発生します。社会人であれば裁判所に行く際は休みを取らなければなりません。
一方、任意整理であれば、裁判所に赴く必要はなく、書類の収集や作成にもそれほど時間はかかりません。弁護士や司法書士に依頼すれば、手続きに必要な書類の作成も代行してくれます。
手続きに時間をかけたくない人、仕事などで時間をかけられないという人には適した手続きです。
保証人がいる借金があり、借金問題を債務整理で解決したい人は任意整理を検討しましょう。
任意整理は個人再生や自己破産と違い整理する借金を選べるため、保証人に迷惑をかけることなく借金の負担を減らすことができます。特に、車や家のローンがある人などは、これらのローンだけ除外して借金を整理すると良いでしょう。
任意整理をしたくない場合は、
などで借金の負担を減らすことを検討してみましょう。
借金問題を抱えている人の中には、正確に家計の収支を把握していない人が少なくありません。
債務整理の前に家計の状況を把握することは基本です。
特に、交際費や趣味に費やす支出など生活に必ずしも必要がないものは、できる限り返済に回すように心がけけましょう。
また、収入面では、本業のほかに副業やバイトができないか検討し、新たな収入先を確保することもひとつの手です。
一括返済とは、一度にまとまったお金を返済する方法です。
一括返済で支払うお金は全額元金に充てられるため、毎月大部分が利息の返済に消えてしまう人には、一気に元金を減らすために有効な手段です。
ただし、無理に一括返済をしようとして生活費を削ることはおすすめできません。
ボーナスなどまとまったお金が入った際に一括返済するなど、生活に影響のない範囲で行いましょう。
おまとめローンとは消費者金融やクレジットカード会社など複数の業者からの借金をひとつにまとめるサービスのことです。
おまとめローンは以下のようなメリット・デメリットを理解してから利用するようにしましょう。
メリット |
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デメリット |
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おまとめローンは金利が低めに設定されており、返済日が統一されるため借金の管理も楽になります。複数の借入があり管理に課題を感じている人にはおすすめです。
一方、おまとめローンは毎月の返済額を減らせる可能性はありますが、返済が長期化し、かえって借金の返済総額自体は増えてしまう恐れがあります。
また、おまとめローンを申し込む際には比較的厳しい審査があるため、誰でも利用できるわけではありません。
確実に毎月の負担や返済総額を減らしたいのであれば、任意整理の方が良いでしょう。
任意整理には確かにデメリットもありますが、過度に恐れる必要はありません。
ブラックリスト状態が自分にとって本当にリスクになるか、最悪の事態は避けられるかを考え、任意整理をするかどうか決めましょう。
任意整理をするとブラックリスト状態になるというデメリットがあります。
しかし、借金問題を抱えている人の場合、これが大きなデメリットとなるかは検討の余地があります。
例えば、日常的にクレジットカードを使いすぎてしまう人の場合、クレジットカードを利用できなくなったり、新たな借り入れができなくなることは借金癖をなおすきっかけにもなります。
また、家や車などのローン契約をする予定がない人は、5年程度の制限はあまり大きなデメリットにならないこともあります。
過度のブラックリスト状態を恐れるのではなく、自分に影響が少ない場合は思い切って任意整理してしまうのも手です。
任意整理のデメリットを恐れて借金問題を放置していると、さらに事態が悪化してしまう恐れがあります。
借金は滞納するとしばらくは督促の手紙や電話が届くだけですが、督促を放置しているとその後は一括請求や差し押さえのリスクが生じます。
一括請求をされても多くの場合は返済に応じることができず、結果的に生活への影響が大きくなってしまいます。
任意整理のデメリットを心配しすぎるより、早めに問題を解決した方が良い場合があります。
任意整理を弁護士や司法書士に依頼する際の流れや手続きに必要な期間、必要書類、費用について解説します。
任意整理をしたい場合、まずは弁護士や司法書士に相談してください。
相談を受けると弁護士・司法書士依頼者の借金総額を確認します。その後、どの債権者と交渉を行うか決定します。
債権者に対して受任通知を発送し、督促や請求をストップしてもらいます。同時に債権者に対して借金の取引履歴を送付してもらいます。
開示された取引履歴をもとに「引き直し計算」と呼ばれる利息の計算を行います。計算が終わると、債権者とそれぞれ個別に交渉を行います。
任意整理後の返済は、通常3年(36回)~5年(60回)の分割払いの範囲内、将来発生する利息はカットしてもらうことを交渉します。
債権者が交渉に合意すれば、合意書作成し、その後は合意書に基づいて新たな返済がスタートします。
任意整理において和解が成立するまでの期間はおおむね3か月程度です。
しかし、これは債権者との交渉がスムーズに進んだ場合です。債権者が利息のカットに応じてくれなかったり、返済期間などの細かな条件で意見が合わないと、和解までの期間は長引きます。
しかし、和解が長引いたとしても、督促や請求はストップしたままです。その間は返済をする必要はないため、手続きが終わるまで落ち着いた環境を保つことができます。
任意整理に必要な書類と入手方法をまとめました。
書類の種類 | 入手方法 |
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債権者一覧表 | 弁護士や司法書士が作成 |
預金通帳 | 自分で用意 |
収入がわかる書類 | 勤務先で発行 |
住民票 | 役所で発行 |
不動産登記簿謄本・権利証 | 法務局で発行 |
生命保険証券 | 保険会社で発行 |
車検証 | 運輸支局で発行 |
債権者一覧表は、どの債権者からどのくらい借金をしているのか把握するための書類です。すべてを把握していなくても事務所側で作成します。
収入がわかる書類としては、直近の給与明細や課税証明書、源泉徴収票などを利用します。源泉徴収票は会社の経理担当に頼めば発行してくれるはずです。
また、状況に応じて必要な書類もあります。不動産登記簿謄本・権利証は不動産を所有している場合、生命保険証券は保険に加入している場合、車検証は車を所有している場合に必要になることがあります。
任意整理は債権者と債務者が交渉する手続きです。
しかし、債務者が直接債権者と交渉をしても応じてもらえないことがほとんどで、実際には弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。
任意整理を依頼した際の費用は借入先の社数に応じて変わりますが、おおよそは1社につき2万円~5万円、さらに減額報酬として10%程度がかかります。もし過払い金を取り戻すことができた場合には取り戻した金額の20%がかかるのが普通です。
任意整理の費用の目安は1社2万~5万円と考えると良いでしょう。
また、債務整理の場合は弁護士や司法書士への相談を無料で行っている事務所が多くあります。
まずは早めに無料相談をして、任意整理が可能か判断しましょう。
任意整理は他の債務整理に比べて借金減額効果は小さいものの、デメリットが少なく生活への影響を最小限にできる便利な手続きです。
借金問題を家族にバレずに解決したい人、利息の返済に苦しんでいる人などにはおすすめの手続きです。
借金問題はひとりで悩まず、早めに相談してください。任意整理に詳しい弁護士や司法書士であれば、依頼者の細かなニーズにもこたえることができます。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。