貸金業者の引当金と過払い金請求できる理由

貸金業者は、過払い金請求の引当金を計上していることをご存知でしょうか?

貸金業者でいう引当金(ひきあてきん)は、過払い金請求や債務整理などの返還請求に対して、あらかじめ計上しておくお金のことです。

貸金業者が引当金を用意しているということは、消費者からの返還請求に備えているということになります。

つまり、貸金業者に対して返還請求を行うことは、まだまだ可能であると言えるでしょう。

しかし、会計用語である引当金の仕組みや返還請求との関係は、なかなか理解しづらいという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、

  • 引当金の概要(目的、要件)
  • 貸金業者が計上する引当金
  • まだまだ過払い金請求が可能な理由

を中心に解説します。

最後までご覧いただくことで、まだまだ過払い金請求できる理由がわかり、ご自身の借金問題の解決にも活かすことができますので、ぜひ参考にしてみてください。

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そもそも引当金とは?

貸金業者と引当金についてを十分に理解していただくために、以下の3つをはじめに解説していきます。

  • 引当金とは?
  • 引当金の目的
  • 引当金の要件

引当金とは?

引当金とは、経理や会計業務の際に使われるお金で、その企業の将来的に発生する費用または損失に備えて、あらかじめ貯めておくお金のことを指します。

引当金で将来必要な費用を先に備えておく

引当金の目的

引当金は、企業会計を正しく行う上で必要な項目です。企業会計は企業会計の基準を守って、ある期間の損益を正しく計算し、税務署や投資家へ報告する必要があります。

企業の財務状況を報告する際は、年度によって大きな損益の変化を起こさないために、あらかじめ予想できる損失を計上しなければいけません。その時に、予想される損失の目安として用いられるものが引当金です。

たとえば、今から5年後にある会社で大きな修繕工事があるとします。引当金がない場合は5年後に修繕費の損失が出ますので、修繕工事を行なった年度は大きな損失が出たことになります。

しかし、企業会計の原則では、年度によって損益が大きく増減することは、企業会計において良いとされていません。

そこで、以下のグラフように引当金をあらかじめ計算しておき、ある年度に大きな損失を出すのを事前に防ぐことが重要になってきます。

引当金で備えておくことで特定の年度に大きな損失を出すことを防ぐことができる

反対に、引当金を計算していないと以下のグラフのように、ある年度に大きな損失が出てしまうことになります。これは企業会計を行う上で良くないため、引当金を計上しておく必要があります。

引当金を計算していないと特定の年度に大きな損失を出してしまうことがある

このように、引当金はある年度に大きな損失を集中して発生させないように、予想される損失をあらかじめ分散させて会計を行うために設けられています。

引当金の要件

引当金には4つの要件がある

引当金の要件は以下の4つがあります。

  • 将来の特定の費用または損失である
  • 発生が当期以前の事象に起因している
  • 発生の可能性が高い
  • 金額を合理的に見積もることができる

以上の要件を満たしているものを引当金として認めています。

貸金業者で例えた場合は、以下のものが引当金として認められる可能性があります。

  • 今後の回収が困難である債権
  • 当期以前に貸し付けた債権
  • 回収不能となる確率が高い債権
  • 回収不能となる金額を計算できる債権

貸金業者が計上する引当金

貸金業者は、債権の回収が困難となった場合に貸倒引当金として計上します。しかし、債務者が債務整理や過払い金請求を行なった場合、計上できるタイミングや金額が異なってきます。

そこで、貸金業者が計上することが多い、以下の3つ引当金について解説します。

  • 自己破産の引当金
  • 個人再生の引当金
  • 過払い金請求の引当金

自己破産の引当金

債権の支払いが困難となった債務者が自己破産を申し立てると、債権者は貸し付けていた債務の半分を貸倒引当金として計上できます。

ただし、自己破産では財産処分を行なってから債権者へ配当されますので、申立ての時点では、全額を引当金とすることができません。同時廃止の決定があった場合のみ、全額を引当金として計上できます。

つまり、自己破産において、配当する財産が無いと判断されて、破産手続が終了した時点で貸金業者は貸倒引当金として処理することが可能となります。

個人再生の引当金

自己破産と同じように、個人再生でも、債務者が再生手続を申し立てた時点で、債権の半分を引当金として計上できます。

個人再生の場合、債務者はすべての支払い義務がなくなるわけではありませんので、債権の全額を引当金とすることはできません。

ただし、再生計画認可が決定されると、貸金業者は「債務者が5年以上先に支払う予定の債務」に対して貸倒引当金として計上することができます。

過払い金請求の引当金

過払い金請求においては、利益返還損失引当金が適用されます。利益返還損失引当金とは、債務者から過払い金請求を受ける前に、請求されるおおよその金額をあらかじめ計上しておく引当金のことを指します。

利益返還損失引当金は、貸金業者がグレーゾーン金利にて貸し付けを行なっていたことで、債務者から過払い金の請求を受ける可能性が高い時に認められます。

また、実際に過払い金請求をされた場合に加えて、過去の貸し付け情報などから、今後過払い金請求を受ける可能性がある債務についても引当金として計上することが可能です。

ただし、他の引当金と同じように、会計の原則に沿って正しい根拠や金額を出す必要があります。

過払い金請求の引当金の対象

過払い金請求の対象となるものは、主に以下の2つです。

  • 過去の実績から過払い金を請求される可能性が高い債権
  • 過払い金請求を受けていてまだ金額が確定していないもの

いずれにせよ、企業会計の原則に従って、発生の可能性が高く、合理的に金額を計算できるものとなっています。

貸金業者への過払い金請求はまだまだ可能

貸金業者は過払い金請求に備えて引当金を用意している

過払い金請求は、2010年以前にグレーゾーン金利で貸付を行なっていた貸金業者に対して、利息の返還請求ができる手続きです。

グレーゾーン金利の廃止から約10年が経過しようとしており、「過払い金請求はもう難しい」と考える方も多くいらっしゃるかと思います。

しかし、実際はまだまだ過払い金の請求をすることが可能です。なぜなら、貸金業者は現在も過払い金請求に対する引当金を大量に計上しているからです。

実際に、こちらの記事(日経新聞|アコム、過払い金請求で400億円の引当金)アコムの損益計算書によると、「2019年の3月に約400億円の過払い金請求の引当金を積み増した」と発表しています。

また、アイフルが2020年5月に発表している決算説明資料(2020年3月期)によると、利息返還請求や債権放棄に対する引当金の残高が264億円となっています。

このような動きからわかるように、大手の貸金業者が大量の引当金を計上するほど、過払い金請求を想定しているということです。つまり、借入者側からすれば、まだまだ過払い金請求が可能であることを示していることになります。

引当金は合理的な計算をもとに計上されていますので、貸金業者が引当金を計上すればするほど、返還請求ができる借入が多くあると言えるでしょう。

迷ったら早めの過払い金請求を

「過払い金請求はもう遅いのではないか」と迷っている方でもまだまだ利息返還の請求は可能です。

ただし、グレーゾーン金利で借入を行なっていた方が対象となりますので、タイムリミットが迫ってきていることも事実です。

そのため、迷っているうちに過払い金請求の権利を失わないように、早めに動き出すことが重要です。

司法書士法人杉山事務所では、過払い金請求に関する相談を無料で承っています。借金問題では、月に3000件の相談実績がありますので、少しでも不安や疑問を抱えている方はお気軽にご相談ください。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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