保証人と連帯保証人の違いは?支払い困難になった場合の対処法は?

保証人と連帯保証人はそれぞれの持つ権利と義務に違いがあります。保証人よりも連帯保証人の方が責任が重いです。

保証人には一定の権利が認められており、契約者本人が支払えなかった借金を減額または本人に請求することを主張できます。一方、連帯保証人には契約者本人に代わる借金の支払い請求を拒否する権利がありません。

保証人と連帯保証人は民法上どういった違いがあるのでしょうか。本記事では両者の違いを分かりやすくご説明します。

また自身が連帯保証人になっているか確認する方法や連帯保証人になったものの支払いが困難になったときの対処法も解説します。自身が連帯保証人になっている契約がある方はぜひご参考にしてください。

保証人と連帯保証人とは

保証人も連帯保証人も契約者本人の代わりに支払いを肩代わりする立場です。たとえば弟が兄の借金の保証人になった場合、兄が借金を返せなければ弟が代わりに借金を返済することになるのです。

民法第446条によると保証人は「主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負うもの」と定義されています。つまり、契約者本人が支払えなくなった場合のピンチヒッターのような立場です。

一方、連帯保証人は契約者本人と同等の支払い義務を負います。連帯保証人は自らが契約しているのとほぼ同じ責任を有しているのです。契約者との関係がどうであれ契約者が返済できない金額は連帯保証人が代わりに返済しなければなりません。

また、連帯保証人は契約者が支払えるかどうかに関わらず、請求されたら返済をしなければいけないのが特徴です。保証人と連帯保証人では請求のタイミングや拒否権の有無などが大きく異なります。

保証人と連帯保証人の違い

保証人と連帯保証人は民法上、大きく分けて3つの違いがあります。それは以下のとおりです。

  • 「催告の抗弁権」の有無(民法第452条)
  • 「検索の抗弁権」の有無(民法第453条)
  • 「分別の利益」の有無(民法第456条)

保証人にはこれらの権利があるため代理の返済を求められても拒否または減額などを主張することができます。一方、連帯保証人には上記の権利が認められていません。そのため返済を求められた場合に拒否できないのです。

「催告の抗弁権」の有無

催告の抗弁権がないので連帯保証人は「まずは契約者本人に請求してください」と言えない

1つめは「催告の抗弁権」という権利です。催告とは契約者に代わり返済を求める請求のことを意味します。そして抗弁とは相手に逆らって主張をすることです。

つまり、催告の抗弁権は契約者の代わりに返済を請求された場合「まずは保証人ではなく契約者に請求してほしい」と主張できる権利のことです。

保証人には催告の抗弁権があります。そのため保証人は返済を求められたら「私ではなくまずは契約者本人に支払いを請求してください。」と言うことができます。当然保証人よりも契約者が優先的に支払う義務があるためこの主張は正当なものです。

一方、連帯保証人には催告の抗弁権がありません。すなわち、支払い請求に対して拒否する権利がないということです。極端にいえば、貸金業者(債権者)が契約者本人に一切請求をせず連帯保証人に返済を要求してきた場合も拒否することはできません。

請求のタイミングや契約者本人との連絡がつかないなどといった事情は関係なく連帯保証人は請求がきたら受け入れなくてはならないのです。民法第452条では催告の抗弁権について以下のとおり定めています。

債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

引用:民法第452条

「検索の抗弁権」の有無

検索の抗弁権がないので連帯保証人は「契約者に差し押さえをするなどして回収してください」と言えない

2つめは「検索の抗弁権」です。検索の抗弁権は契約者本人に支払わせることを主張する権利です。代理の返済を要求されたとき以下のように主張できます。

「契約者には支払い能力があるのだからそちらに請求してほしい。もし本人が支払えないと言うなら財産や給料の差し押さえをして回収してほしい。」

差し押さえとは借金が滞納された場合に貸金業者が契約者の財産を確保する法的な手段です。つまり、検索の抗弁権を行使する場面では契約者の家や給料などを差し押さえれば借金の回収ができるだろうと主張できます。

いわゆる「保証人に請求せず契約者本人に返済を請求してくれ」ということです。なお保証人には検索の抗弁権があり連帯保証人にはありません。

保証人は上記の主張ができますが、連帯保証人の場合はどのような場合においても請求を受け入れなければならないのです。万が一契約者が支払える状況にあるにも関わらず返済を滞納しその請求が来た場合も連帯保証人は支払いを拒否できません。

民法第453条では検索の抗弁権について以下のとおり定めています。

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

引用:民法第453条

「分別の利益」の有無

分別の利益がないので連帯保証人は借金を全額、一人で支払わなければならない

3つめは「分別の利益」です。分別の利益は保証人が複数いる場合に支払い義務を人数で等分できます。

つまり、300万円の借金に対して保証人が3人いれば誰かが全額を支払うのではなく1人あたり100万円ずつ支払えばよいということになります。分別の利益を適用すれば100万円が保証人1人の支払い上限額になるためそれ以上の支払い義務はありません。

保証人には分別の利益がありますが連帯保証人にはないのが特徴です。連帯保証人は複数いたとしても一人ひとりが借金全額の支払い義務を負います。つまり、300万円の借金に対して連帯保証人が仮に3人いてもそれぞれが300万円の支払い義務を負うのです。

連帯保証人が複数いる場合は請求された人が支払うことになります。この請求に対しては先述のとおり、催告の抗弁権や検索の抗弁権がないため拒否できません。民法第456条では保証人が複数人いる場合について以下のとおり定めています。

数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条【分割債権及び分割債務】の規定を適用する。

引用:民法第456条

保証人よりも連帯保証人の方が責任が重い

連帯保証人の責任は保証人よりも重いです。連帯保証人は保証人のように請求に対して拒否する権利がありません。

「契約者が支払えなくなることはないだろうから連帯保証人になっても大丈夫だろう。」という気持ちで連帯保証人にサインをする人もいるでしょう。しかし、連帯保証人は契約者に支払い能力がある場合でも代理で返済する義務が生じます。

そのため連帯保証人になるには慎重な判断が必要です。ではここから連帯保証人が必要な契約の種類や自分が連帯保証人になっているか確認するための方法についてご紹介します。

保証人または連帯保証人が必要な契約

保証人または連帯保証人が必要な契約は主に以下のとおりです。

  • 貸金契約
  • 奨学金借り入れ
  • 賃貸契約
  • 入院申し込み

上記の契約では保証人や連帯保証人を必要とする場合があります。しかし、必ずしも保証人や連帯保証人が必要になるわけではありません。中には保証人不要の契約もあります。ではどのような場合に保証人が不要になるのか見ていきましょう。

まず借金で結んだ貸金契約のほとんどは連帯保証人もしくは保証人が必要です。特に連帯保証人を必要とするケースが多い傾向にあります。

連帯保証人は保証人と違い請求されたときに拒否権がありません。つまり、貸金業者としては保証人よりも連帯保証人を定めておく方が確実に代金回収できるのです。

ただし、住宅ローンなどの借り入れにおいては保証会社が間に入ることも多く保証人も連帯保証人も必要ありません。この場合は保証会社が保証人の役割を果たします。契約者が保証会社に保証金を支払うことで万が一支払いできなくなった場合に支払いを立て替えてもらえる仕組みです。

賃貸契約も同様です。不動産会社によっては保証会社と提携しており保証人を立てずに契約できる場合があります。

奨学金の場合、契約時に保証を「人的保証」と「機関保証」のいずれかから選べます。人的保証は保証人を必要とするもので機関保証は「日本国際教育支援協会」という保証機関に保証会社の役割を担ってもらう方法です。

人的保証と機関保証の割合はおよそ半々とされており半数の学生が保証人不要の奨学金借り入れをしているということになります。

入院時に申告を求められる身元保証人も保証人の一種です。入院者本人が手術代や治療費を支払えなくなった場合、保証人として返済の立て替えを求められます。保証人と連帯保証人のどちらを必要とするかは病院によって異なります。

自分が保証人または連帯保証人か確認する方法

民間の金融機関における借り入れの場合、自分が保証人または連帯保証人になっているかどうかは信用情報機関で情報照会できます。

信用情報機関とは貸金業者の必要とする個人情報を管理する組織です。日本情報信用機構(JICC)や株式会社シー・アイ・シー(CIC)などがあります。

信用情報機関に問い合わせることで自身がどの契約の保証人になっているかが分かります。

また、奨学金や賃貸契約についても同様です。そのような場合は契約者本人に聞いて契約書を確認するか貸金業者や不動産屋などの債権者に直接確認するとよいでしょう。

了解なく連帯保証人または保証人にされた場合は無効

まれに、自分の印鑑を勝手に使う、サインを代筆するなどして連帯保証人または保証人にされてしまうことがあります。この場合の署名捺印は無効です。

もし自分がそういった形で保証人にされていた場合、一切の請求に応じる必要はありません。必要に応じて弁護士などの専門家に相談するして解決しましょう。

なお親が未成年の子どもを連帯保証人にすることも法律上認められていません。これを「無権代理行為」と呼び子どもに支払い義務はありません。

ただし、近年の貸金契約では保証人の意思確認を確実に行なう業者がほとんどです。そのため、勝手に連帯保証人にされるケースはまれです。

保証人や連帯保証人の支払い義務は相続される

親が借金の保証人または連帯保証人になっていた場合、親が亡くなると支払い義務は相続人である子どもに引き継がれます。相続の原則においてはプラスの財産だけでなく、負の財産や権利も等しく引き継がれるためです。

ただし、借金自体が時効にかかれば保証人または連帯保証人の返済義務も消滅します。借金の時効は基本的に最後の返済から5〜10年です。この期間内に差し押さえや裁判こちらからの返済意思表示などが行なわなければ時効機関は中断されません。

また、時効を成立させるためには時効援用の手続きが必要です。

契約者が債務整理する前に連帯保証人に請求が来る

契約者本人が債務整理をすると借金の額が減るまたは帳消しになります。契約者が債務整理後に残った借金を支払えない場合、その支払い責任は連帯保証人に回ってきます。

一般的にいえば連帯保証人が支払うまでには以下のような流れが想定されます。

一般的な連帯保証人が支払うまでの流れ

まず貸金業者が契約者本人に請求し支払えない場合は契約者が債務整理を行ないます。借金を減額または免除してもなお支払えない場合は貸金業者は残りの借金を保証人に請求します。保証人が支払いをする流れが一般的です。

しかし、貸金業者は少しでも多くの代金回収を望んでいます。そのため契約者が債務整理をする前に連帯保証人に借金全額の請求をすることがあるのです。すると流れは以下のような形になります。

契約者が支払いできない場合には即、連帯保証人に請求されることがある

先の例と同様、貸金業者はまず契約者本人に返済を求めます。ここで契約者が支払えない場合は契約者本人が債務整理する前に借金全額を連帯保証人に請求することがあるのです。

連帯保証人は契約者本人と同等の責任を負うためこれを拒否できません。この場合は連帯保証人が借金を全額支払うことになります。

つまり、本来契約者本人が債務整理することで減らせたはずの借金がすべて連帯保証人に請求されることになるのです。連帯保証人は先にご紹介した3つの権利がないため請求を拒否できません。

連帯保証人が支払い困難になった場合の対処法

連帯保証人には請求に対する拒否権がないとはいえ急に多額の返済を請求されても支払えないケースが多いでしょう。もし連帯保証人が請求額を支払えない場合、取るべき手段は以下の2つです。

  • 貸金業者と交渉
  • 債務整理

貸金業者と交渉

1つめは貸金業者と話し合い払える範囲で返済する方法です。どの程度こちらに譲歩してくれるかは業者にもよりますが、現実的な返済額を提示すれば応じてくれる場合もあります。

貸金業者によっては連帯保証人の職業や年収を加味し当面利息のみの支払いでよいとしてくれる場合もあります。積極的に交渉すれば多くの貸金業者は譲歩してくれるでしょう。

反対に貸金業者からの請求を無視すると裁判を起こされる可能性があります。裁判は時間も手間もかかるうえに連帯保証人としての責任を問われて無理な支払いを命じられる可能性もあります。

交渉をすれば裁判よりも柔軟に返済プランを組めるので早めに連絡を取るのがおすすめです。

債務整理

2つめは債務整理です。債務整理は借金の利息カットまたは減額や免除ができる手続きのことを意味します。連帯保証人になったことにより返済する借金についても債務整理は可能です。債務整理には以下3つの方法があります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

任意整理は貸金業者と交渉し利息のカットや支払機関の延長ができる手続きです。減額される幅は少ないものの手軽でコストも抑えられる手続きといえます。一定の収入があり減額すれば支払いの見込みがある場合はこの方法がおすすめです。

個人再生は裁判所を通して借金を減額する方法です。個人再生では借金額に応じて最大10分の1にまで元本を減額することができます。ただし財産を処分する必要があるなど、手間やデメリットがやや大きい方法といえます。

任意整理をしても借金を返済しきれないことが予想される場合は個人再生を視野に入れてもよいでしょう。

自己破産は保険料や罰金などの債務を除いた借金を免除する手続きです。家や車などの財産は手放さなければなりませんが、どうしても返済不能になった場合の最終手段として有効です。

連帯保証人が支払い不能になった場合は上記のような手続きを行ないます。ただし債務整理はいずれも任意の交渉とは異なり専門的な知識や交渉力を必要とします。

そのため、債務整理を検討する場合は司法書士に相談して代理人になってもらうと安心です。代理人をつければすべての手続きを任せられるので仕事など日常生活に支障がでることもありません。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

債務整理の基礎知識へ戻る