借金を返す意思はあるのに返せない、借金返済が思うように進まない、このような方はたくさんいます。
日本信用情報機構(JICC)の統計データによると、日本では借り入れ残高がある人は1,000万人以上になります(2019年8月末時点)。
この数値を見ると日本では今や13人に1人は借金をしていることになります。
借金返済をするにはどうしたらよいのか、解決には債務整理しかないのか、借金をそのままにしたらどうなるのかなど、借金返済のポイントを解説いたします。
自力で借金返済をするには、まずは自身の状況を正確に把握し、返済計画を立てることから始める必要があります。
借金をしている人はだいたいの借金額はこれくらいだろうと把握しているつもりでも、実際には金額がずれていたり、毎月の返済額のことしか頭に無かったりするものです。
きちんと自分の状況を理解し、返済計画を考え、それでも無理ということであれば債務整理などの別の手段を検討する余地があります。
最初に確認すべきは現在の借金残高です。そして毎月の返済日、金利(%)、約定返済額、返済可能額、完済予定日を把握しておきましょう。
どこから、いつ、いくら借りたのかも重要ですが、毎月の返済が滞っていなければ現在の借金残高は減っているはずです。
把握すべきものは次の通りです。
なお、借りた時期が2010年以前である場合には借金の金利が利息制限法の上限金利(15%~20%)を超えている場合があります。
もし2010年以前に借金をしている場合や金利が18%以上である場合には過払い金請求をすることで借金を減らしたり、お金が返ってきたりする可能性がありますので、弁護士や司法書士にご相談ください。
毎月の返済日は借金ごとに決まっているはずです。返済日は必ずお守りください。
返済日を過ぎてしまうと、通常の利息よりも高い遅延損害金を取られることになります。返済日が過ぎてもすぐに支払いをすれば被害は小さくすみますが、返済日を過ぎても借金返済をしないということが続けば借金は逆に増えることにもなりかねません。
借金には約定返済額という毎月これだけは返済しなければいけないという最低返済額が定められています。しかし、一般的な借金では約定返済額の中には借金の元本以外にも利息が含まれます。
特に借金をした当初の返済は約定返済額の多くが利息に充当されるため、借金の元本はなかなか減りません。
本気で借金を減らす意思があるのであれば、約定返済額よりも多くの返済をする必要があります。毎月多くの借金返済ができればよりよいですが、実際には毎月の返済額を上げるということは難しいため、ボーナスや臨時収入があったときなどは消費に回すのではなく、借金返済を意識するようになれば完済も早まります。
借金返済にあたって、自分がどの程度の利息を支払っているのかの把握も重要です。
利息制限法では上限金利は借りた際の金額により変わってきます。
借入額が10万円未満 | 上限金利20% |
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借入額が10万円~100万円 | 上限金利18% |
借入額が100万円以上 | 上限金利15% |
一般的には銀行系カードローンは15%程度、消費者金融系では18%程度の金利となっていますが、借りた金額によって金利は15%~20%と変わりますし、どこから借りたかでも金利は大きく変わります。
借金をした際の契約書や書類があれば確認して、1年間に支払う利息を計算してみましょう。
計算式は、借金残高(円)×金利(%)÷12ヶ月です。
この計算をすることで今の借金残高に対する月の利息額を把握できます。
前述していますが、借金返済の際に約定返済額以上の返済をすることで借金残高が大きく減りますので、結果的には利息を低く抑えることができ、借金返済が早まります。
現状の把握と利息の計算方法が分かったら、返済計画を立てましょう。
なお、借金返済計画を立てる際に、毎月の返済可能額が重要になってきます。約定返済額を返済するだけでは借金返済はなかなか進まないことは前述した通りですが、無理に返済額を増やしても返済計画を守ることはできません。
返済計画を見直して完済できるのは安定した収入があり、借金返済のための借金をしない場合です。
収入があっても不安定だったり、借金返済のために借金をするようであれば返済計画通りに進まないことが多く、自力での返済は難しいといえます。
家族や知人に頼る、債務整理を検討するなど、別の方法を考えましょう。
借金返済にあたって、現状を把握し、返済計画を立てると必ずぶつかるのが家計との兼ね合いです。
毎月の収入だけではなく、毎月の支出も把握することで家計の無駄も見えてくるはずです。
電気代や食費の節約も重要ですが、削るとしても限界があります。可能であれば携帯電話料金プランの見直し(格安スマホへの切り替え)、保険の解約、新聞などの定期購読の停止などにより毎月の固定費を大きく減らすこともできます。
場合によってはお酒やタバコなどの遊興費も検討しなければなりません。
ただし、過剰に制限してしまうと長続きせず、結果的に借金返済がうまくいかないことも考えられますのでご注意ください。
借金返済の計画を検討したものの、借金残高と金利を考えると毎月の返済額は捻出できそうもない、ということもあります。
この場合には自身での返済は現実的ではありませんので別の手段を検討しましょう。
債務整理とは、任意整理、個人再生、特定調停、自己破産の4つの総称で、借金を減額したり免除したりすることで借金問題を解決できる救済制度です。
任意整理や特定調停を行うことで金利を免除にしてもらい、返済を早めることができます。
個人再生では借金そのものを大きく減らすことで返済が楽になります。そして、自己破産を行うことで借金返済そのものをしなくてよくなります。
借金の前提としては返済するということがあり、借金返済を楽にする債務整理を行うことには当然デメリットもあります。
どうしても自身での返済ができないという場合に債務整理を利用することは生活再建の助けになりますが、原則的には借金は自分で返済できるように努力をしてから債務整理を検討しましょう。
借金返済中の場合には債務整理を行う時に同時に過払い金請求を行うことができます。
任意整理、個人再生、自己破産を弁護士や司法書士に依頼することで過払い金請求を同時に行い、借金を返済できるかもしれません。
なお、債務整理の中でも特定調停だけは過払い金請求を同時に行うことができませんので、別途請求手続きを取る必要があります。
過払い金の発生条件は次の2点を満たすことです。もしも自分に過払い金があるかもしれないと思った場合には早めに弁護士や司法書士にご相談ください。
繰り上げ返済というのは、約定返済額(毎月決まった返済額)を超えて返済することで返済を早める借金返済方法です。
繰り上げ返済を行うことで借金の元本を大きく減らし、毎月の利息額も減らすことができます。
手元に余裕があればおすすめの方法ですが、手元の資金がなくなることで急な出費に対応できなくなるということがありますので、突然のことに対応できるだけの資金は確保するようにしてください。
おまとめローンとは、複数の金融業者からの借金をしている場合、そのすべての借金を別の1社に立て替えてもらい、その1社に対して返済をしていくことで毎月の返済を楽にする方法です。
おまとめローンのメリットとしては、金利を安くし、毎月の返済額を下げることができることですが、デメリットとしては、長期分割返済になることで最終的な返済総額は多くなることです。
また、数字に表れないメリットとしては、毎月の返済が1社だけになりますので、精神的にも楽になることがあげられます。
両親、友人、知人から借りることができれば借金の金利がかからないこと、借金の督促がないことから精神的にも返済額としても楽になります。可能であればこの方法で解決できることが最良ともいえます。
しかし、毎月の返済を滞ることがあれば人間関係にヒビが入ることは間違いなく、自身の生活スタイルを改善しない限り、また借金をするというリスクがあります。
親や友人を頼る場合には、自分の家計の管理と毎月の返済を守るようにしましょう。
退職金がすべての会社員にあるものではありませんが、ある程度のまとまったお金が退職金により賄えるのであれば、自身で解決するという意味では有効な手段です。
ただし、退職金は多くは老後の資金や将来的に活用できる資金ですので、今使ってしまうことで将来への不安を残すことになります。退職金があるとしても、現在の収入で返済できるのであれば返済計画を作り、多少の無理をしてでも努力による返済の方が将来的には損をしないことが多いです。
生命保険に限りませんが、毎月積み立てている契約がある場合には解約することで解約返戻金を受け取ることができるものがあります。契約の途中で解約にすることで返戻率は悪くなりますが、毎月の支払いもなくなりますので借金返済をするためには有効な手段といえます。
ただし、解約する前に何のための保険なのかを考えた方がよいです。一度解約にしてしまうと再度加入するための審査が厳しくなったり、再加入の際の保険料が高くなったりします。
借金返済の手段を列挙いたしましたが、それでもやはり自分では借金返済ができないという場合には、まずは弁護士や司法書士に相談し債務整理を検討するようにしましょう。
借金返済のために借金をすることを自転車操業ということがあります。自転車はこぎ続けないと倒れてしまうように、借金をし続けないと返済ができなくなるような状態のことです。
借金返済のために別の会社から借金をすることは、返済のための利息分も借金をすることになりますので、結果的には借金額が多くなります。返済のための借金を繰り返すことで借金額が膨れ上がり、多重債務というような状態に陥りやすく、危険な行為です。
本当に返せるアテがあるのであれば借金返済のための借金がダメとは言い切れませんが、やめておいた方が無難です。
もし、借金返済のために借金をするしかない、というような状態になるのであれば自分だけの力では解決できない状態ですので弁護士や司法書士に相談し、債務整理をすることをおすすめいたします。
債務整理の中でも任意整理と呼ばれる方法はもっとも利用される方法です。
借金の利息を免除してもらい、3年~5年での分割返済をすることで確実に借金を減らすことができます。家族や職場に内緒で解決することができ、裁判をしない手続きですのでスピード解決も可能です。
借金返済ができずに債務整理を検討する、という場合には最初に任意整理をお考えください。
個人再生は自宅を残せる債務整理です。任意整理でも自宅は残せますが、個人再生の場合には借金を5分の1に圧縮することができますので任意整理よりも効果が大きく、非常に有効な手段です。
自己破産は自分の財産を処分する代わりに借金返済の義務がなくなる債務整理です。財産も一定以上の価値があるものが処分されるだけですので、すべての財産が処分されるというわけではありません。効果がもっとも大きい債務整理ですが、デメリットも多く、弁護士や司法書士に相談してから検討するのが望ましいです。
借金返済の方法について述べてきましたが、借金返済を滞った場合にはどうなるかはご存知でしょうか。
最初は電話やハガキによる督促が届くだけですが、最終的には給料や財産の差し押さえということになります。
順番としては次の通りです。
貸金業者は国から許可を得た会社ですから、ドラマで見るような怖い督促を受けるということはありません。
しかし、電話での督促、ハガキや督促状での督促は来ますし、それでも支払いがなければ借金全額の一括返済を求めてきます。
ブラックリストに載るのは債務整理をした時と思われている方もいますが、実は借金の返済が滞った場合にも信用情報機関への登録が行われます。
それでも支払いをしない場合には裁判を起こされ、給料や財産の差し押さえということが起こります。
借金返済が遅れる場合には、自分から貸金業者への連絡をするようにしてください。
借金返済を滞った場合には差し押さえに発展しますが、滞った状態が続くと時効になるのかは気になるところだと思います。
借金にも時効はありますので、5年間支払いをしなければ借金の時効を理由に返済をしないという主張をすることができるようになります。
しかし、現実的には借金を踏み倒して時効になるというケースは稀です。
金融業者も事業として貸金業を営んでいますので、借金を踏み倒し続ける方に対しては裁判を行うことで時効にならないようにしたり、差し押さえによる強制的な回収を行います。
借金返済が滞った時点からの遅延損害金は発生し続けますので、支払いをしないことにより最終的な返済額は高額になり、どうにもならないということが起こりえます。
借金返済ができない、となった時点で債務整理を検討する必要がありますので、危ないと思ったらすぐに弁護士や司法書士に相談するようにしてください。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。