過払い金請求で和解するメリット確実に取り戻すポイント

過払い金請求で和解をすると比較的スピーディーに手続きを終えられますが満額は取り戻せません。一方、裁判で訴訟を起こすと手続きはやや長くなるものの、満額取り戻せる可能性が高くなります。

和解は手っ取り早く過払金を取り戻せる方法です。中には貸金業者の方から、契約者に対して和解を求めて来る場合もあります。

しかし、和解では双方が歩み寄って金額を決めます。貸金業者としては少しでも支払う金額が少ないに越したことはありません。そのため満額を取り戻せないのです。

そこで本記事では過払い金請求で和解するメリットとデメリットを整理して解説します。また、実際の和解手順や和解する際の注意点についてもご紹介しますので過払い金請求の際の参考にしてみてください。

過払い金請求の方法

過払い金請求をするには以下の2種類の方法があります。

  • 任意交渉による和解
  • 裁判による訴訟

それぞれの方法で過払い金請求を行なったときの比較表が以下のとおりです。

和解 裁判
過払い金を取り戻せる額
返還までの期間
費用
手続きの難しさ

和解は満額の過払い金が取り戻せない可能性が非常に高いものの手っ取り早く取り戻せるという点でメリットがあります。

これに対し、裁判では手間や時間はかかるものの、満額に利息を付けた金額での過払い金請求も可能です。

任意交渉による和解

多くの人が取る手段が任意交渉による和解です。任意交渉とは法的な拘束力がない状況で行う当人同士の話し合いのことを意味します。つまり、契約者本人もしくは代理人と貸金業者が直接交渉をするという方法です。

裁判所が間に入らない分スピーディーに解決する場合が多いです。しかし、契約者本人が任意交渉をしようとする場合は貸金業者によっては対応してもらえないこともあります。足元を見られて低い金額で和解を締結してこようとする場合もあるのです。

また、任意交渉はあくまで交渉なので両方が同意しなければ和解は成立しません。そもそも任意な交渉であるため場合によっては難航するケースもあります。

このような場合は司法書士を代理人に立てるのがおすすめです。司法書士が貸金業者に連絡することによって両者が妥協できるラインの金額で交渉をスムーズにまとめられるでしょう。

裁判による訴訟

もう1つの方法は裁判による訴訟です。裁判所を通して民事訴訟を起こすことで法的な拘束力を持って過払い金を取り戻せます。訴訟では取引履歴書など過払い金があることが明白な場合は過払い金が満額返還されます。

ただし、裁判で争うとなると貸金業者も弁護士を立てて徹底抗戦してくる場合があります。少しでも返還する額を下げようと抵抗されてしまうと過払い金の返還までには時間がかかることが予想されます。

裁判での過払い金請求は満額取り戻せる可能性が高い反面、やや時間と手間がかかるというデメリットがあります。ただし、手間の部分に関しては司法書士に依頼すれば依頼者本人が負担をこうむることは一切ありません。

過払い金請求で和解するメリット

過払い金請求で和解するメリットは以下のとおりです。

  • 裁判よりも過払い金返還までが早い
  • 裁判よりも費用がかからない

ではそれぞれのメリットについてご説明します。

裁判よりも過払い金返還までが早い

交渉による和解は2~4か月で終わるが裁判をすると4か月以上かかってしまう

過払い金をより早く取り戻せるのは和解です。和解とは裁判所の仲介や事務手続きを必要としない当事者同士の話し合いのことです。そのため裁判所への書類提出、支払い、期日調整および出廷をする必要がなく比較的スピーディーな解決が期待できます。

具体的には取引履歴書という契約内容の明細を入手してから早ければ2ヶ月程度で和解が成立します。長くかかっても3~4ヶ月で和解できるでしょう。

一方裁判は4ヶ月以上かかるのが一般的です。長ければ1年以上かけて過払い金を取り戻すケースもあります。和解と裁判では手続きの長さに2ヶ月から半年以上の差があるため返還を急ぐ方は和解がおすすめです。

裁判よりも費用がかからない

裁判をすると裁判の手数料を余計に支払わなくてはならないことがある

和解をすることよって裁判で訴訟をするより費用が抑えられます。契約者本人が和解をする場合は費用は一切かかりません。

また、司法書士に代理人を依頼すると事務所に応じた着手金や成功報酬が必要となります。成功報酬については取り戻した過払い金の20%前後と設定する司法書士事務所が多いようです。

一方、裁判を起こすと上記の費用に加えて以下の費用がかかります。

収入印紙 数千円~2万円
予納郵券 数千円
実費(登記簿謄本の取得代や郵便代など)
交通費

収入印紙や予納郵券は訴訟を起こす際に裁判所に提出する手数料です。収入印紙は10万円の過払い金請求につき1,000円、予納郵券は6,000円程度かかります。これらに加えて登記簿謄本の取得代や訴状提出の際の切手代、出廷する際の交通費などが加算されます。

過払い金の請求額にもよりますが訴訟を起こすと2万円以上の費用がかかると考えておくとよいでしょう。

なお多くの司法書士事務所では裁判をした際の報酬を戻ってきた過払い金の25%としていることが多いです。和解の報酬は20%なのに対し訴訟をすると5%報酬が多くなるのです。費用だけ見れば和解の方が安く済むことが分かります。

和解するデメリットとリスク

過払い金請求で和解するデメリットとリスクは以下のとおりです。

  • 過払い金が満額返還されない
  • 交渉が難航する可能性がある

ではそれぞれのデメリットについてご説明します。メリットと比較してご覧ください。

過払い金が満額返還されない

和解を選択すると満額の過払い金は取り戻せません。本来、過払い金は貸金業者が債務者に対して満額返還すべきものです。しかし、ほとんどの貸金業者は過払い金を一定割合減額した条件で和解を求めてきます。

和解をした場合の主な貸金業者の返還率の違いは以下のとおりです。

過払い金の返還率 貸金業者名
90%以上 クレディセゾン、オリコ
80%以上 アコム、レイク
70%以上 プロミス、イオンクレジット、ニコス
60%以上 アイフル
40%以上 CFJ

上記のデータを見ると中には返還率が50%を切る業者もいます。その点、訴訟を起こせばこうした正当な理由のない減額の主張は通りません。過払い金の額と存在が明白であれば全額取り戻すことは簡単です。

それどころか利息を付けて過払い金を請求することもできます。裁判での過払い金請求に慣れた司法書士に依頼することにより本来の過払い金を利息付きで取り戻せる可能性があるのです。

もちろん和解の時点でも利息を付けて過払い金請求できますが、任意の交渉でこちらの請求に満額対応する貸金業者はほとんどいません。

交渉が難航する可能性がある

和解という方法はあくまで任意の交渉です。そのため双方が合意しなければ和解は成立しません。たとえばこちらが返還率50%でも納得できる場合は和解は比較的簡単でしょう。しかし「絶対に満額取り戻したい」となると和解の難易度は上がります。

一方、裁判は取引履歴書をはじめとする確かな証拠があれば全額の過払い金を取り戻せる可能性が高いです。過払い金が発生している証拠を出せればそれ以上貸金業者は食い下がれません。

契約状況に何かイレギュラーな事情がない限りそれ以上争うことはないでしょう。このような点でいえば裁判の方が手続きは事務的かつ簡潔です。

また、和解は契約者本人が行おうとするとより難航しやすい傾向にあります。司法書士を代理人につければ貸金業者も真摯に取り合ってくれるでしょう。

和解における過払い金の決め方

和解では満額の過払い金が取り戻せない可能性が高いことをご説明しました。過払い金の返還額を計算する際はどういった決め方をするのでしょうか。ここからは過払い金請求に用いる計算式と減額の要因となる条件について解説します。

なお過払い金満額の基本的な計算方法については以下の記事をご覧ください。

過払い金の計算は2種類

貸金業者に請求する過払い金額の計算方法には以下の2種類があります。

  • 利息充当方式
  • 利息非充当方式

利息充当方式は過払い金の元本も利息も最も大きくなる計算方法です。

利息充当方式では過払い金と利息を次の借入に充当できる

本来過払い金には年率5%の利息が発生します。利息充当方式では返済中に新たな借り入れをした場合、過払い金の元本ではなく過払い金につく利息を借入額に充当するというものです。

一方、利息非充当方式では新たな借り入れの返済に過払い金の元本を充当します。借り入れの返済に過払い金の元本を充当するか利息を充当するかが両者の違いです。

利息非充当方式では過払い金だけを次の借入に充当できる

利息充当方式の場合は過払い金の利息を返済に充てることで元本が減らず過払い金の請求額を多く残すことができます。より多くの過払い金を取り戻す場合は利息充当方式で請求額を算出する必要があります。

これらの計算式はいずれも自身で計算するには複雑です。司法書士に依頼することによって依頼者の利益が最大になるように計算してもらえるでしょう。

取引によっては争点がある場合も

争点とは文字通り争うポイントのことです。過払い金請求でいえば貸金業者が反論できるポイントを指します。

本来ならこちらが取引履歴書に基づいた過払い金請求を行い貸金業者が請求された額を支払うのが一般的です。しかし理由を見つけて貸金業者側が減額の主張をしてきます。この要因となるのが争点です。

争点は和解交渉時だけでなく裁判においても過払い金額を左右する要因となります。そのため争点がある場合は司法書士に相談し有利に交渉を進めるための主張をしてもらうと良いでしょう。

既に和解している場合

過去に契約者と貸金業者の間で和解した場合は過払い金請求ができない可能性があります。

貸金業者はできるだけ過払い金を払いたくないものです。そこで過払い金があり、なおかつ借り入れの残っている顧客に対して「借り入れの利息を免除」「返済額を減額」などの提案を持ちかけて和解を求めます。

この和解は当事者同士の和解なので「私的和解」や借金をゼロにすることから「ゼロ和解」などと呼ばれます。多くの場合は私的和解で過払い金の存在は契約者に知らされません。

しかし、締結する文章には債務の減額や利息カットのほかに「契約書に定めた金額以外の債権債務はないことを認める」といった一文があります。これは清算条項と呼ばれる文章で契約書記載の金額以外は一切貸し借りがないことを証明するものです。

この清算条項がのちの過払い金請求を予防するために利用されることもしばしばあります。過払い金請求をしても過去に清算条項付きで和解した事実を武器に請求の無効を主張されてしまうことがあるのです。

ただし、近年では清算条項の文章は過払い金請求に対するものではないとする判決も出ています。つまり、過去に和解をしていても過払い金請求が通る可能性もあるということです。

分断取引と見なされる場合

2回以上借り入れと完済を繰り返した場合、取引が1つものか分断されているかで発生する過払い金が変わる

同じ貸金業者に対して完済と新たな借り入れを繰り返している場合は取引の期間が争点となります。

完済後に再び新規借り入れをした場合は、前後の取引は一連のものとみなされる場合があります。複数の取引を一連のものとして計算できれば、より多くの過払い金を取り戻せるでしょう。

なお取引が一連か分断されれているかの判断は、2つの契約内容が同じものかどうかが大きく影響します。

貸金業者取引を細かく分断した方が過払い金が少なくなるため、複数の取引を一連のものだと認めたがりません。しかしそれも一連の取引だと裁判で認められれば、より多くの過払い金を取り戻せる可能性があるのです。

このように複数の取引を一連のものとして過払い金請求をする場合、貸金業者はそれらの取引が分断されていることを主張してきます。一般的に取引が一連と見なされるブランクに明確な定義はありません。

そのため一連取引か分断かが争点となった場合は双方の主張の根拠が非常に重要です。なお、クレジットカードのキャッシングでは長期間でも一連になりやすい傾向にあります。なぜならキャッシングのたびに契約書を発行するわけではなく、毎回同一内容で借り入れをするからです。

そのため、カードの更新中は複数回の取引でも一連になる傾向が強いのです。貸金業者の場合、さまざまですが1年以内であれば一連と認められることが多くあります。

推定計算が必要な場合

取引履歴書が一部欠けているなど確実な過払い金額を証明するものがないことがあります。この場合は推定計算という方法を用いて分からない部分の過払い金を推定で補って算出します。

しかし、推定計算の結果には確実な証拠がないため貸金業者側が反論してくるケースがあるのです。

特殊な取引の場合

一般の借り入れを不動産担保ローンへ切り替えたり契約自体を途中で切り替えたりした場合は過払い金の計算は複雑になります。

このようなイレギュラーな契約は争点になりやすい傾向です。取引形態が特殊な場合は任意交渉での和解も難航することもあります。和解できそうにない場合は裁判所を通して過払い金請求することがかえって早期解決につながる可能性もあるのです。

過払い金請求で和解する手順

ここでは契約者本人ではなく司法書士が代理人として和解をすすめる手続きについて解説します。

受任通知の送付

司法書士は依頼を受けると貸金業者に受任通知を送ります。これは自身が代理人についたことを知らせ過払い金請求手続きを開始することを伝えるための手紙です。

受任通知を送付してからは契約者本人が貸金業者と直接やり取りすることはなくなります。なお返済中の場合でも取引は過払い金請求手続きが終わるまで保留されます。

取引履歴書の取り寄せ

取引の履歴や明細が記載された取引履歴書を貸金業者から取り寄せます。取引履歴書は司法書士だけでなく契約者本人が取り寄せることも可能です。

司法書士に相談する時点で取引履歴書を持っておくと過払い金の大まかな計算もスムーズにできるでしょう。

なお、取り寄せには数週間から2ヶ月ほどかかる場合があります。取り寄せは早めに自分で行なっておくのがおすすめです。窓口で取得できる場合は直接出向いて請求します。

引き直し計算

取引履歴書が届いたら過払い金を計算します。取引履歴書が一部しかない場合は推定計算で不足分の過払い金額を算出します。

和解交渉を行なう前にどの程度の額まで譲歩できるかといったことを司法書士と依頼者ですり合わせます。もちろん司法書士は満額の返還を目指して交渉しますが、先述のとおり和解で満額返還が実現することは難しいです。この時点で裁判を選択することもできます。

和解交渉

準備が整ったところで和解交渉を開始します。交渉は電話で行います。司法書士に代理人を依頼していれば交渉に応じてもらえるので安心です。

ただし、争点がある場合は貸金業者は過払い金請求の無効や減額の主張をしてくるでしょう。司法書士は先方の主張に対して理論的に交渉を進めます。交渉は早ければ数週間で完了します。

交渉の結果、落ち着いた金額で問題なければ和解は成立です。和解条項を記載した書面を取り交わし両者がサインすることで過払い金を取り戻せます。もし先方が金額を譲らずこちらが納得できない場合は裁判で訴訟を起こすことになります。

過払い金返還

和解交渉が済み書面の取り交わしが済んだらあとは返還を待つのみです。和解が完了してから過払い金が振り込まれるまでの期間は貸金業者によりますが、概ね2ヶ月前後をみておきましょう。

過払い金の振り込みが確認できたら過払い金請求の手続きはすべて完了です。

過払い金請求で和解する際の注意点

最後に過払い金請求で和解をするときの注意点についてご紹介します。確実に過払い金を取り戻すためにもご確認ください。

私的和解はしない

貸金業者は現在も取引のある契約者に対して私的和解を求めることがあります。しかし、私的和解には応じないようにしましょう。

私的和解では利息をカットするなどお得に思える条件が提示されます。しかし、結果的には契約者つまり債権者にとって損になるものがほとんどです。

特に条文の最後に清算条項が記載されていると後に過払い金請求をしても無効だと主張されるおそれがあります。

貸金業者から甘い言葉で和解を持ちかけられてもすぐに応じる必要はありません。ほとんどの私的和解は過払い金請求されないために行われるものです。  

過払い金請求の実績豊富な司法書士に依頼

過払い金請求は実績豊富な司法書士に代理人を依頼しましょう。司法書士事務所の中でも過払い金請求を専門に扱う事務所とそうでないところがあります。

過払い金請求の実績豊富な事務所なら安心して任せられる上に手続きもスムーズでしょう。複雑な過払い金計算もすべて行なってくれます。交渉では依頼者の利益が最大になるよう有利に進めてもらえるはずです。

過払い金請求は契約者本人が直接行なうこともできます。しかし、相手は過払い金について知り尽くした業者です。請求をかわされてしまったり低い額を提示されることもあります。

このようなリスクや手間を考えると費用をかけてでも司法書士に依頼した方が確実といえます。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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