過払い金には税金がかかる?課税の条件や確定申告のポイントを解説

過払い金そのものには一般的に税金は発生しません。しかし、過払い金の元金とともに請求できる利息には所得税が発生することがあるのです。

所得税がかかるとせっかく取り戻した過払い金が目減りし損になってしまうということもあります。また、税金が発生するということは確定申告をする必要があります。サラリーマンなどの給与所得者に確定申告はなじみがないかもしれません。しかし、申告漏れがあると罰金対象になることもあるのです。

そこで本記事では、過払い金と税金の関係を詳しく解説します。税金のかかる割合や条件を理解しておけば、より有利な過払い金請求ができるでしょう。また、確定申告を忘れてしまう心配もありません。

過払い金には税金がかかることもある

過払い金に税金はかからないが、利息が戻ってきた場合には所得とみなされるので税金がかかる

過払い金は元々、払う必要のないお金です。そのため、過払い金は取り戻しても収入とは見なされません。そのため、原則として元金に税金がかかることはないのです。

過払い金の請求は法律用語で「不当利得返還請求」と呼ばれます。これは不当な方法で得た利益(過払い金)を返還するよう請求する手続きのことです。不当利得の返還義務については民法第703条で定められています。

(不当利得の返還義務)

第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

引用:民法

しかし、過払い金につく利息は別です。元金に加えて請求する利息は本来自分の支払ったものではありません。そのため、所得とみなされて税金がかかる場合があるのです。

ただし利息がつけば必ず課税されるというわけではありません。

過払い金に税金がかかるケース

過払い金に税金がかかるのは以下のような場合です。

  • 利息の支払いを経費として計上していた場合
  • 利息(遅延損害金)も含めて取り戻した場合
  • 生活保護を受けている場合

利息を経費として計上していた場合

借り入れの返済にかかる利息を確定申告において経費として計上していた場合は税金がかかります。本来経費として所得から差し引いていたものが返ってきたことになるのでその分所得が純増するという考え方によるものです。

ただしこの場合は元々、自身で確定申告を行なっていたことが前提となります。そのため、個人事業主の方などに多く当てはまるでしょう。自ら確定申告を行なっていないサラリーマンや主婦の方などは当てはまりません。

利息も含めて取り戻した場合

過払い金請求をする際、5%の割合で利息をつけて過払い金を取り戻すことができます。

この利息は本来自分で支払ったものではないので収入という扱いになるのです。そのため、利息分にのみ税金(所得税)がかかることになります。

利息全般に税金がかかることになりますが事業主所得を得ている立場ではなく、なおかつ利息が20万円以下である場合には確定申告の必要がありません。確定申告が必要となる条件については後に詳しく解説します。

生活保護を受けている場合

過払い金の元金には税金がかかりませんが、生活保護を受けている場合においては別です。生活保護の受給者が過払い金を取り戻した場合、利息だけでなく元金も一時所得と見なされます。つまり、取り戻した過払い金全体に税金がかかるのです。

本来生活保護は経済的に生活の苦しい人に対する国の救済措置としての側面を持ちます。そのため、過払い金が戻ってきたことで生活できると判断された期間は受給の停止などの措置が取られる可能性もあります。

受給停止とまではいかないまでも、戻ってきた過払い金の分だけ支給額が減る場合もあります。例えば5万円の過払い金が戻ってきたことで来月の支給額から5万円減らされるなどです。

過払い金が戻ってきたことを福祉協議会に報告することは、受給者の義務とされています。つまり、原則として過払い金を福祉協議会への報告なしで取り戻すことはできます。

つまり生活保護を受けている状態で過払い金請求することは可能です。しかし額によっては生活保護の支給が減額または打ち切りとなる可能性があることを把握しておきましょう。

税金の考え方

税金について国税庁公式サイトでは以下のような説明が記載されています。

税金とは、年金・医療などの社会保障・福祉や、水道、道路などの社会資本整備、教育、警察、防衛といった公的サービスを運営するための費用を賄うものです。みんなが互いに支え合い、共によりよい社会を作っていくため、この費用を広く公平に分かち合うことが必要です。

出典:国税庁

つまり、国の社会保障やインフラなどの環境を整えていくために必要なのが税金です。また、税金は課税対象によって所得課税や消費課税、資産課税などの種類に分類されます。

中でも、過払い金を取り戻した際にかかる税金は「所得税」です。所得税は収入に対して課税されます。

課税割合と控除率

所得税の課税金額と税率、控除額については以下のとおりです。控除とは課税金額から所定の金額を差し引くことで所得金額を抑え節税できる仕組みを指します。

    
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 ~ 195万円未満 5% 0円
195万円~330万円未満 10% 97,500円
330万円 ~ 695万円未満 20% 427,500円
695万円 ~ 900万円未満 23% 636,000円
900万円 ~1,800万円未満 33% 1,536,000円
1,800万円 ~ 4,000円未満 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁

上記のとおり、課税される所得金額によって所得税の割合が変動します。過払い金の課税対象となるのは利息の部分のみです。一般的な過払い金請求では利息だけで195万円を超えることはありません。つまり5%の税率が課せられることになります。

たとえば過払い金の利息が15万円だった場合、税率は5%なので計算式は以下のとおりです。

150,000円 × 0.05 = 7,500円

この場合の所得税は7,500円です。同様に計算すると20万円の利息なら1万円、40万円の利息なら2万円の所得税がかかることになります。なお税率5%が適用される場合、控除はありません。

過払い金利息の確定申告が必要な条件

原則的に過払い金請求で利息が20万円以上戻ってきた場合には確定申告が必要になる

過払い金利息を取り戻し確定申告が必要になる条件は以下の2種類です。

  • 取り戻した利息が20万円を超える

フリーランスや個人事業主取り戻した利息が20万円を超える

過払い金で得た利息は確定申告上、「雑所得」という扱いになります。雑所得とは所得のうち「その他」に分類される所得のことです。過払い金利息のほかにもアフィリエイトなどの副業で得た所得も雑所得に含まれます。

雑所得は20万円を超える場合、確定申告が必要です。ただしこれは会社で年末調整を行なっている給与所得者(サラリーマンやOLなど)に限る条件です。

なお、過払い金の利息が20万円未満でも他の副業による収入などを合算すると雑所得全体が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。

フリーランスや個人事業主フリーランスや個人事業主など普段から自分で確定申告をしている人は利息の金額に関わらず確定申告が必要です。たとえば利息が1万円であっても確定申告が必要となります。

また、事業主でなくても以下のような場合には利息の金額に関わらず確定申告が必要です。

  • 年末調整をしていない
  • 医療費控除等を受けるため確定申告をする
  • 会社役員やその親族から収入を得ている
  • 年間収入が2,000万円を超える人

サラリーマンなどの給与所得者であっても上記に当てはまる場合は20万円の基準が適用されません。過払い金の利息額に関わらず確定申告を行ないます。

過払い金利息の確定申告におけるポイント

過払い金の利息は返還された年度の確定申告で申請します。貸金業者に対して支払った利息を経費として申告していなければ支払われた利息のみを雑所得の総収入額に加算することで申請できます。

一方、以前から貸金業者に対して支払った利息を経費として申告していた場合は申告内容の修正が必要です。修正方法は計上していた経費の分類が不動産所得や事業所得にかかるものかそうでないかで異なります。

詳しい確定申告の方法については、国税庁のホームページを参照するか、お近くの税務署に問い合わせることをおすすめします。

利息つきで過払い金を取り戻すポイント

過払い金請求をすれば必ず利息つきで返還されるわけではありません。貸金業者は少しでも返還金額を少なくしたいものです。そのため法定的効力のある裁判で過払い金請求をすればより確実に利息も含めて過払い金を取り戻せます。

また、裁判で過払い金の利息の支払いが認められるかどうかは、貸金業者が「悪意の受益者」であると判断されることが重要です。悪意の受益者とは「法定金利を超えていることを知っていながら支払いを請求し不当に利益を得ていた」人のことです。

悪意の受益者については、民法第704条で以下のように説明されています。

(悪意の受益者)

民法第704条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合においてなお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

出典:民法

つまり、貸金業者が法定金利を超える利息だと知っていながらわざと支払いを求めていたかどうかが判決を左右します。過払い金請求をする側は、貸金業者が悪意の受益者であることを訴える必要があるということです。

税金がかからないように過払い金請求する方法

「できれば税金をかけたくない」という方もいるでしょう。その場合、以下のような方法を取れば税金をかけずに過払い金を取り戻すことができます。

任意交渉で過払い金請求する

任意交渉で過払い金請求すれば税金がかかることはほぼありません。

なぜなら、過払い金で税金がかかるのは利息の部分だけです。貸金業者は法的効力のない任意交渉ではほとんどの場合、利息の支払いに応じません。それどころか返還すべき元金も減額して提示してくる場合があります。

任意交渉はあくまでお互いの意見を提示し折り合いをつけるという方法です。そのため、契約者側が強く支払いを命じる権利はありません。任意交渉は元金が100%戻ってくる可能性が低い方法ではありますが税金が発生することはまずないといってよいでしょう。

裁判で元金に近い額を過払い金請求する

裁判で過払い金請求する場合も元金のみ、またはそれに近い額を請求すれば税金が発生させずに済みます。

より多くの額を取り戻したい場合は通常、満額の過払い金に利息をつけて請求します。しかし、税金がかかることを避けたい場合は自身の確定申告が必要となる条件に合わせて額を抑えて請求するとよいでしょう。

ただし請求金額を算出するには根拠のある計算が必要です。説得力のある正当な金額でなければ裁判の手続き上不利になってしまいます。場合によっては先方の貸金業者に経験不足を見抜かれ足元を見た金額提示をされるケースもあるのです。

税金がかからず、なおかつ裁判上でも問題のない過払い金額は状況によって異なります。より裁判を有利に進めるには司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

過払い金請求の費用を経費で計上できる

費用がかかった場合には一部を経費として計上することができる

少しでも節税したい場合、利息にかかる割合の弁護士費用や司法書士費用を経費として計上できる場合があります。

たとえば過払い金の元金90万円に対して10万円の利息がついたとします。この場合、利息の割合は以下のとおりです。

10万円 ÷ 100万円 = 0.1

つまり、過払い金の元金に対して1割の利息を受け取ったことになります。訴訟における司法書士費用は過払い金元金の25%が一般的なので、この場合は25万円がかかったと仮定します。20万円の費用のうち利息にかかった割合は1割です。

25万円 × 0.1 = 2万5,000円

すなわち、2万5,000円を利息の取得にかかった弁護士費用として経費に計上できる計算になります。10万円の利息のうち2万5,000円分を経費として計上できれば所得のかかる金額は7万5,000円

(10万円 – 2万5,000円)に抑えられるのです。

ただし、税務署によっては弁護士費用や司法書士費用を経費として計上することが認められない場合もあります。申告方法や計算が不安な場合はあらかじめ管轄の税務署に問い合わせて確認しましょう。

確定申告漏れは罰金が課される場合も

確定申告の対象となっているにも関わらず申告をしないと罰金が課されます。罰金は過払い金の利息が50万円以下なら15%、50万円を超える場合は20%の割合で支払わなければなりません。

つまり、20万円の過払い金利息を受け取った場合、罰金は15%なので以下のとおりです。

20万円×0.15=3万円

せっかく取り戻した利息が罰金で減ってしまうのは非常にもったいないことです。なお金額を少なく申告した場合は1000万円以下の罰金もしくは最大で10年の懲役というペナルティが課されます。

確定申告の期限は過払い金の利息が支払われた翌年2月16日から3月15日までです。申告方法が不明な場合は管轄の税務署に問い合わせるなどしてあらかじめ確認しておきましょう。1月から3月は税務署が非常に混みあうため早めの問い合わせをおすすめします。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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