過払い金請求をしたいけど、過払い金がなぜ発生するのか、過払い金請求ができる根拠がわからない方もいるかもしれません。
この記事では、
などを解説します。
過払い金請求をすれば、お金を取り戻すことができます。なぜ過払い金が発生し、お金を取り戻せるのか解説します。
借金をすると借りたお金とは別に利息も返済する必要があります。
ただし、お金を貸す際の金利は利息制限法の上限を超えてはなりません。
利息制限法を超える金利で借金をし返済をすると、利息を支払いすぎることになります。この支払いすぎた利息を過払い金と呼ぶのです。
過払い金請求の根拠は民法第703条の不当利得返還請求権です。
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(引用:民法第703条|e-Gov)
過払い金は不当利得にあたるため、過払い金請求によりお金を取り戻せます。
その理由は、過払い金が利息制限法を超える金利から発生した利息であり、本来であれば支払う必要のなかったお金だからです。
過払い金発生の原因は、利息制限法と出資法にあります。実は、貸金業法が改正される前まで2つの法律の上限金利が異なっていたのです。
利息制限法の上限金利 | 15%〜20%(借り入れ額による) |
---|---|
出資法の上限金利 | 29.2% |
当時の利息制限法では、上限金利を超えていても刑罰や行政指導などの罰則がありませんでした。
つまり、出資法の上限である29.2%の金利さえ守っていれば、利息制限法に違反していても問題ないと考えられていたのです。
問題がないのであれば、消費者金融やクレジットカード会社は多くの利益を得るために、20%超〜29.2%の金利(グレーゾーン金利)でお金を貸します。
その結果、借金をする際の金利が高いことが原因で、多くの債務者が借金の返済に苦しむようになりました。
しかし、平成18年1月13日の最高裁判決で、利息制限法を超える金利での貸付が違法となりました。
最高裁判決以後は、過払い金請求をすればお金を取り戻せるようになったのです。
本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。
(引用:最高裁判所判例集|裁判所)
平成18年に最高裁判決で過払い金の返還が認められるまで、過払い金を取り戻すことはほとんどできませんでした。
では、なぜ平成18年までは過払い金請求ができなかったのでしょうか?その理由を解説します。
過払い金請求については平成18年以前より認められていました。
その証拠に昭和43年11月13日の最高裁判決では、はじめて裁判所が貸金業者に対して支払いすぎた利息の返還を命じています。
今本件についてみるに、原判決の認定によれば、亡Dは上告人に対する消費貸借上の債務につき利息制限法所定の利率をこえて判示各金額の支払をなしたものであるが、その超過部分を元本の支払に充当計算すると、既に貸金債権は完済されているのに、Dは、その完済後、判示の金額を上告人に支払つたものであつて、しかも、その支払当時債務の存在しないことを知つていたと認められないというのであるから、上告人に対して完済後の支払額についてその返還を命じた原審の判断は、正当である。
(引用:最高裁判所判例集|裁判所)
そのため、昭和43年以後に利息制限法を超える金利で借金をした場合、過払い金を取り戻せるようになりました。
しかし、昭和43年の判決で過払い金請求が認められたにもかかわらず、その後の判例では過払い金を取り戻せたケースはほとんどありません。
その原因は昭和58年の貸金業法改正によりみなし弁済制度が認められたからです。みなし弁済制度とは、以下の条件を満たしていれば利息制限法の上限を超える金利で借金をした場合でも違法にならない制度です。
つまり、利息制限法を超える金利で借金をしたという理由だけでは、みなし弁済制度の適用により過払い金を取り戻せなくなったのです。
平成18年1月13日の最高裁判決はみなし弁済制度の適用を完全に否定しました。
みなし弁済制度が成立するためには「債務者が利息を自分の意思で支払った」ことが認められなければなりません。
しかし、債務者は貸金業者よりも立場が弱いため、利息制限法を超える金利であっても返済せざるを得ないのが現状です。
そのため、債務者が利息制限法に違反していることを知らずに返済をしたとしても、自分の自由な意思で返済をしたことにはなりません。
この判決が出たことで、貸金業者はこれまでのように利息制限法を超える金利でお金を貸すことができなくなりました。
過払い金が発生するのはどのような貸金業者なのでしょうか?貸金業者とは以下の2つを表します。
消費者金融の多くは年15%〜20%を超える金利でお金を貸していたことがあります。
したがって、過去に以下のような消費者金融で借金をしていたことがあれば、過払い金が発生している可能性があります。
消費者金融だけでなく、クレジットカード会社も年15%〜20%を超える金利でお金を貸していたことがあります。
たとえば、以下のようなカード会社では過払い金が発生している可能性があるため、お金を取り戻すことが可能です。
ただし、すべてのカード会社が過払い金請求の対象になるわけではありません。
平成18年1月の最高裁判決よりも前から利息制限法の範囲内でしかお金を貸していないカード会社も存在します。
以下のようなカード会社では、過払い金が発生していたとしても、すでに時効により請求ができない可能性が高いです。
カード会社 | 利息制限法を超える金利でお金を貸していた時期 |
---|---|
ジャックス | 平成9年1月以前 |
オリックス | 1990年代 |
またJCBのように、分割払いでの返済時には過払い金が発生しない業者もあります。
過去に過払い金が発生している可能性がある貸金業者を利用していたとしても、過払い金請求の対象になるケースとそうでないケースがあります。
その理由は貸金業者によって過払い金の発生期間が異なるからです。
貸金業者 | 過払い金が発生する取引期間 |
---|---|
アイフル | 平成19年7月31日以前 |
プロミス | 平成19年12月18日以前 |
三菱UFJニコス | 平成19年3月以前 |
オリエントコーポレーション | 平成19年3月31日以前 |
たとえば、アイフルは平成19年7月31日以前から借金をしたことがあれば、過払い金が発生しています。
しかし、オリエントコーポレーションから借金をしている場合は、平成19年3月31日以前から借金をしていなければ、過払い金は発生しません。
過払い金に該当しているのか調べる場合は、取引した業者だけでなく、いつから取引しているのかも調べる必要があります。
過払い金請求はすべての借金が対象になるわけではありません。
過払い金の仕組み上、過払い金の対象にならないケースや過払い金があっても請求ができなくなるケースもあります。
過払い金にも民法の時効が適用されるため、請求には期限があります。
過払い金の時効については、最後の取引日から10年です。ただし、令和2年の民法改正により、改正日以降に完済した場合の時効は5年となりました。
取引期間 | 時効期間 |
---|---|
令和2年4月1日以前に完済 | 10年 |
令和2年4月1日以降に完済 | 5年 |
どちらのケースでも過払い金には時効があるため、請求をしなければお金を取り戻せなくなるので注意が必要です。
なお、時効をストップさせるためには、貸金業者に対して過払い金返還請求書を送らなければなりません。
したがって、貸金業者から取引履歴を取り寄せたり、司法書士や弁護士に相談をしただけでは、時効は止まらないので注意してください。
過払い金請求は、過払い金が発生した貸金業者に対して行います。請求先の貸金業者が倒産している場合は、請求をしてもお金を取り戻すことはできません。
たとえば、以下の貸金業者は倒産しています。
ただし、他社と合併している場合は、合併先の会社に対して過払い金請求をすれば、お金を取り戻せる可能性があります。
なぜなら、過払い金の債権が合併先の業者に移っていることがあるため、過払い金請求の権利もなくなるとは限らないからです。
すでに存在しない貸金業者 | 合併先の業者 |
---|---|
ゼロファースト | エポスカード |
DCキャッシュワン | アコム |
ポケットバンク | プロミス |
過払い金は仕組み上、利息制限法の金利を超えた場合のみ発生します。
他方、以下のような金融商品は利息制限法の範囲内でしか貸付を行っていないので過払い金は発生しません。
そのため、仕組み上、過払い金が発生するのは消費者金融やカード会社から借金をしたケースがほとんどです。
クレジットカード会社のショッピング枠の利用は過払い金請求の対象外です。ショッピング枠を利用してもカード会社から借金をしているわけではありません。
キャッシング枠 | ショッピング枠 | |
---|---|---|
適用される法律 | 貸金業法 | 割賦販売法 |
毎月入金するお金 | 利息 | 手数料 |
したがって、適用される法律も貸金業法ではなく割賦販売法です。ショッピング枠の利用額が多くても過払い金は発生しないので注意してください。
過払い金請求はお金が戻ってくるメリットがあります。ただ、債務者の状況によってはリスクやデメリットもがあるので事前に把握しておくことが必要です。
過払い金請求をしただけでブラックになるわけではありませんが、借金を返済中で回収した過払い金が借金よりも少ない場合は信用情報機関に登録されブラックになります。
信用情報機関に登録される理由は、発生した過払い金が借金よりも少ない場合は過払い金請求ではなく借金の減額になるからです。
借金が減額された場合、残った借金については貸金業者と交渉して、返済期間や毎月の返済額を決める必要があります。
この手続きを任意整理といい、信用情報機関に登録されるのです。
過払い金請求をした際に請求先の貸金業者は2度と利用できなくなるので注意してください。
その理由は貸金業者では顧客情報の保管を行っており、過払い金請求をした債務者は社内ブラックとして登録されるからです。
貸金業者からすると過払い金請求を行った方には二度とサービスを提供したくないと考えます。
そのため、請求先の貸金業者は利用できなくなるのです。
ネット上には、過払い金の無料診断ができるサイトを運営している司法書士や弁護士事務所があります。
過払い金の無料診断のサイトを見ると、以下の情報を入力するだけで過払い金が無料かつ数分以内でわかるような印象を受けます。
ところが、過払い金の無料診断では過払い金の発生額を診断するのは不可能です。
なぜなら、金利や借りたお金が同じでも毎月の返済額や返済期間により発生する過払い金が変わるからです。
無料診断の結果で高い金額が出ても、実際に回収できた過払い金は少ないといったこともあるので注意が必要です。
正確な過払い金を知るためには、以下のことを行う必要があります。
正確な過払い金を知るために必要なこと | 理由 |
---|---|
取引履歴を取り寄せる | 取引期間や金利によって過払い金が異なる |
過払い金の引き直し計算をする | 1円単位で過払い金を計算できる |
過払い金請求をする以前に貸金業者と和解した場合、過払い金を回収できない可能性があります。
たとえば、貸金業者に対して過払い金請求を行い、すでに裁判所を通して和解している場合は、過払い金を回収できません。
また、貸金業者から借金をゼロにする提案を受け和解をした場合も注意が必要です。
提案を受けた際に結ぶ和解書のなかで借金以外の債権や債務(過払い金を含む)がないことに同意することになります。
同意と同時に過払い金がない事実を認めることになるため、お金を取り戻せない可能性が高いです。
安易に貸金業者の提案には乗らないようにしてください。
過払い金請求をするには以下の2つの方法で手続きを行わなければなりません。
このうち、自分の力で手続きを行うと、以下のような手続きをすべて自分でやらなければなりません。そのため、手間や時間がかかるだけでなく、精神的な負担もかかります。
加えて「満足に過払い金が戻ってこない」「督促や取り立てが止まらない」などのデメリットもあるのでおすすめできません。
過払い金請求をするのであれば、司法書士への依頼をおすすめします。
貸金業法の改正前は利息制限法と出資法の上限金利が異なっていたため、過払い金が発生するケースが多く存在していました。
ただし、みなし弁済制度が原因で、過払い金請求が本格的に増加したのは、平成18年1月13日の最高裁判決以降です。
過払い金は仕組み上、最後の取引日から10年を過ぎたり貸金業者が倒産したりすれば、お金を取り戻せなくなります。
司法書士法人杉山事務所では、過払い金の相談や着手金無料で承っています。お気軽にお問い合わせください。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。