借金問題を解決しようとして債務整理や過払い金請求をしようと調べてみると弁護士と司法書士が出てきます。どちらも法律家ではありますが、何が違い、どちらに相談すべきか分からないという方もいらっしゃると思います。
過払い金請求を弁護士に依頼するとどうなるのか、司法書士に依頼するとどうなるのか、ご紹介いたします。
弁護士も司法書士も法律家ですが、大原則として司法書士は法律行為の代理を行うことができません。ただし、2002年(平成14年)の司法書士法の改定により司法書士の中でも法務大臣の認定を受けることができた場合(認定司法書士になった場合)に限り簡易裁判所の訴訟代理権が与えられます。
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士法より抜粋
弁護士法72条では弁護士以外は訴訟や代理ができないと定めていますが、認定司法書士は例外として扱われることになり、過払い金請求や任意整理を行うことができるようになりました。
また、司法書士法の改定以前から司法書士が自己破産や個人再生の書類作成代理を行うことは可能でしたので現在ではほとんどの債務整理業務を行うことができるようになりました。
弁護士は法律問題への相談、アドバイスを行え、代理人としても交渉ができる一方、司法書士は不動産や会社の登記、供託を行うことに専門的です。弁護士と司法書士では業務に大きなが違いがあるのは事実です。
また、過払い金請求とはじめとする債務整理については、弁護士も司法書士のどちらも相談者の代理人として金融業者と交渉し、場合によって裁判まで行うことができます。
しかしながら、弁護士は法的な制限がないためトータルサポートができるのに対し、司法書士は個別の債権(借金や過払い金のこと)が140万円までに限り相談、交渉、訴訟ができる、と制限されています。
認定司法書士とは、法務大臣の認定を受け、簡易裁判所において取り扱う民事事件の代理業務を行うことができる司法書士です。簡易裁判所管轄の民事事件であれば弁護士と同様に代理人になれるという点が特徴的です。
通常、司法書士は相談者の代理人になることはできないのですが、2002年(平成14年)の司法書士法の改定により、司法書士の中でも所定の研修を終え、簡裁訴訟代理能力認定考査に合格し、法務大臣の認定を受けたものを認定司法書士と呼び、簡易裁判所における請求額が140万円までの民事事件であれば取り扱うことができるようになりました。
従来では司法書士は法廷に立つことはできませんでしたが、司法書士も140万円までという条件付きで法廷に立つことができるようになったのです。
相談者にとってはあまり重要ではないので気にされていない方も多いのですが、法律事務所と法務事務所は明確に違いがあります。
弁護士法により、弁護士は法律事務所と名乗ることができますが、司法書士は法律事務所と名乗らずに法務事務所と名乗っています。どちらも同じような意味ではありますが、事務所名から弁護士なのか司法書士なのかを判断することもできます。
法律家といえば弁護士ですが、司法書士や行政書士も法律を扱う士業ですので扱う範囲が分からないという方もいらっしゃるようです。弁護士と司法書士はご説明いたしましたが、行政書士はどうなのでしょうか。
弁護士はあらゆる法律相談、交渉、訴訟などができるのに対し、司法書士は不動産や会社の登記、供託などを行います。例外的に認定司法書士は140万円までの簡易裁判所における民事事件を扱うことができます。
一方、行政書士の主な業務は許認可などの書類の作成、およびその書類作成のための相談や調査です。
司法書士と行政書士で業務が異なりますが、弁護士はその両方を行うことができます。そのため、過払い金をはじめ、債務整理を行う場合には弁護士または認定司法書士にご相談ください。
前項でご説明したように弁護士は司法書士の業務を行うことができます。しかも、司法書士には金額制限があるのに対し、弁護士には金額制限がありません。
では過払い金請求などの債務整理を行う場合には司法書士よりも弁護士の方が有利なのでしょうか?
弁護士はあらゆる法律事務、相談、交渉を行うことができます。つまり、金融業者からの借金が140万円を超える場合でも取り扱うことができます。認定司法書士であっても個別の借金が140万円を超える場合には取り扱うことができません。
また、司法書士が代理で行えるのは簡易裁判所までです。地方裁判所以上になると弁護士でなければ代理では行えません。
これは弁護士の大きな強みです。
しかし、過払い金請求をする際には必ずしも弁護士を選ぶと良いとは限りません。なぜなら弁護士の中には刑事事件を専門としている事務所や民事を扱っていても企業弁護を行っている場合には消費者側の過払い金請求には難色を示す場合があるからです。
法律上、過払い金請求を行うことができても、専門外であったり得意でなかったりすると業務がスムーズに運ばなかったり、結果的に戻ってくる過払い金が少なくなるということも考えられます。
弁護士と司法書士と対比すると、やはり司法書士ではできないことが目立ちます。しかし、それでも過払い金請求については司法書士でも問題なく行えることが多いです。
過払い金請求において司法書士が行えるのは過払い金が140万円を超えない場合に限りますが、これは1社あたりの金額です。過払い金請求の対象が2社、3社と増えていけば200万円、300万円と回収額が増えることがありますが、司法書士でも対応可能です。
過払い金の発生額は計算しないとわかりませんが、1社あたりの過払い金の発生額は高い方でも100万円前後が多く、1社で140万円以上が発生するというのは比較的少ないです。そして、過払い金請求を裁判にて行う場合でも簡易裁判所で解決できることが非常に多く、控訴を行い地方裁判所になるというケースは稀です。
参考までに、アイフルの2020年3月期推移を見ると2019年4月~2019年9月までの半年間で58億9,000万円の過払い金返還があり、件数は6,700件ということですので、1人あたり90万円前後発生した計算になります。
このように、過払い金請求においてはほとんどの場合では司法書士でも対応可能です。
なお、過払い金請求の費用面では弁護士と比べると司法書士の方が安い傾向にあるようです。
債務整理には任意整理、自己破産、個人再生のどの処理を行うかで弁護士と司法書士の違いが変わりますので、種類ごとにご説明いたします。
なお、特定調停も債務整理ですが、原則的にはご自身で行う手続きですのでここでは割愛いたします。
最高裁平成28年6月27日判決では次のように判断されました。
債務整理を依頼された認定司法書士は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。
最高裁判所判例集より
ここでいう司法書士法3条1項7号には「民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
」とあり、裁判所法第33条第1項第1号には「訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
」とあります。
つまり、個別の債権ごとの価額が140万円を超えない場合には司法書士が代理人として手続きをすることができます。
例えば、A社から100万円、B社から100万円を借金している場合には借金合計は200万円ですが、個別では140万円を超えていませんので司法書士でも対応可能です。また、A社に200万円の債務がある場合であっても銀行の保証分で100万円とカードローンで100万円のような時にも司法書士が代理することは可能です。
司法書士は書類作成の代理人になることができますので、自己破産や個人再生の申立書を作成することができます。司法書士のできることは申立書の作成までですが書類作成以外をしないということではなく、裁判所からの免責決定が出るまでサポートすることは可能です。
ただし、裁判所での面談(審尋といいます)に司法書士が同席することはできません。弁護士は同席できますので、この点では両者に違いがあります。
司法書士 | 弁護士 | |
---|---|---|
過払い金請求 | 代理人 | 代理人 |
任意整理 | 代理人 | 代理人 |
自己破産 | 書類作成代理人 | 代理人 |
個人再生 | 書類作成代理人 | 代理人 |
ただし、司法書士では個別の債権額で140万円を超えることはできません。
では過払い金請求を行う際には、どのように事務所を選べばよいのでしょうか。
過払い金請求を行う際に重要なのは、信頼できるかどうかと交渉力があるかどうかです。信頼できる事務所で交渉力がある場合、金額が140万円以下であれば司法書士であっても弁護士であっても同じだと言えます。
司法書士で対応が難しいのは140万円を超える場合です。個別案件で140万円を超えてしまう場合には司法書士であっても受け付けることはできませんので弁護士に依頼するか、ご自身で行うしかありません。
事務所の交渉力があるかどうかは、過払い金の返還率で見ることができます。信頼できる事務所が複数ある場合には、報酬が安い事務所ではなく、返還率の高い事務所を選ぶようにしましょう。
詳しくは、過払い金請求に失敗しないための司法書士・弁護士事務所の選び方をご確認ください。
司法書士や弁護士に依頼された方の多くは円満に解決し、過払い金返還を受けることができますが、中には相談者の弱みに付けこみ、暴利をむさぼる悪徳法律事務所があるのも事実です。
トラブルになりやすい事務所の特徴をまとめておりますので過払い金請求トラブル、悪徳弁護士や司法書士にご注意をご参照ください。
ここまでで弁護士と司法書士の違いと弁護士だからといって必ずしも有利ではないということをご説明いたしましたが、明確に弁護士に依頼すべきケースもございます。
任意整理や過払い金請求では個別に140万円を超えるケースでは司法書士が受任することはできません。そのため、事前に借金額や過払い金の発生額が140万円を超えると分かっている場合には弁護士に相談する方がスムーズです。
ただし、通常は事前に140万円を超えるかどうかを判断することは難しいため、まずは無料相談をご利用ください。債務整理や過払い金請求のノウハウを持っている司法書士であれば対応できない案件であっても料金体系の近い弁護士を紹介するなどで対応してくれることがあります。
通常、自己破産の書類作成であれば司法書士でも対応できますが、東京地方裁判所に限っては、本人による自己破産申し立ておよび司法書士による自己破産の書類作成を困難にし、弁護士による申し立てを必須とする運用をしています。
そのため、東京で自己破産をすることが明確であるならば弁護士に依頼した方がスムーズです。
ただし、借金返済に困っていても自己破産以外で解決できる場合もあります。お気軽にご相談ください。
法人規模や事業規模によっては自己破産は弁護士の方が適している場合があります。
従業員との雇用関係や取引先との契約解消など自己破産手続き以外の部分が問題になるようであれば弁護士を代理人にした方がスムーズです。
ただし、東京地裁の案件を除き、個人の自己破産であればほとんどの場合で司法書士でも対応可能です。
弁護士と司法書士に関するよくある質問をまとめています。
過払い金請求や任意整理を司法書士に依頼した後に140万円だと分かった場合には司法書士が受任することはできません。
この場合は自分で手続きをするか弁護士に依頼するかですが、自分で手続きをすることは難しいことが多く、弁護士に再依頼することになります。
このことを理由に最初から弁護士に依頼した方が良いと主張する方もいますが、依頼すべきなのはノウハウをきちんと持った事務所ですのでご注意ください。
弁護士に依頼したからといって安心とは限りません。
弁護士であっても司法書士であっても得意分野があります。日常的に債務整理を行っていない弁護士であればスムーズには進みませんし、司法書士であれば受任できないこともあります。
司法書士に依頼した結果、勝手に和解されたという事例もありますが、弁護士にも同様の事例は存在します。弁護士と司法書士のどちらが安心ということはなく、正しく対応してくれる事務所に依頼してください。
法務局への登記などの手続きであれば司法書士の独占業務ですので対応できます。しかし、交通事故や離婚などの法律相談ということであれば司法書士で対応できる範囲には限界がありますので弁護士に相談するのが一般的です。
司法書士に依頼したからといって必ずしも弁護士よりも安いということはありません。実際に弁護士よりも費用の高い司法書士も存在します。
ただし、日弁連も日司連も料金規程を定めていますので傾向としては司法書士の方が安いことがあります。
行政書士は法律家というには難しい点が多く、法律相談をするのであればおすすめいたしません。
過払い金請求や債務整理は行政書士では受任できませんので必ず弁護士か司法書士に相談しましょう。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。