過払い金請求に必要な取引履歴とは?貸金業者には開示義務がある

過払い金請求を行うには貸金業者に取引履歴の開示を求めるところから始まります。

取引履歴には過去の取引が記載されていますので、この取引履歴を確認することで過払い金がいくら発生しているのかを計算することができます。

取引履歴を取り寄せる際の注意点や貸金業者が取引履歴を開示しなかった場合の対処法などをご紹介いたします。

取引履歴とは

取引履歴とは、貸金業者が保管している顧客との間で行われた貸し付けや返済の経過や債務内容が書かれている記録です。この取引履歴を確認することで、いつ、いくら借りて、いくら払っているか、すべての取引内容が分かります。

なぜ取引履歴が必要なのか

過払い金とは払いすぎた利息のことです。2010年の法改正前は貸金業者は利息制限法の上限金利(15%~20%)を超える金利を取っていたため、超過した分は今からでも返還請求をすることで取り戻すことができます。

そして、貸金業者には取引履歴という過去の取引が記載されている書類を保管しておりますので、取引履歴を確認することでいついくら支払ったのか、過払い金がいくら発生しているのかを計算することができます。

過払い金は貸金業者から連絡が来て返してくれることはありません。そのため、自分から取引履歴を開示請求し、自分で過払い金の金額を確認した上で請求する必要があるのです。

つまり、自分にいくらの過払い金が発生しているのかを計算するために取引履歴が必要になります。

取引履歴の記載内容

取引履歴には決まった様式はなく、貸金業者ごとに自由な様式を作成します。

しかし、ほとんどの貸金業者では次のような内容を取引履歴に記載しています。

  1. 貸付額
  2. 返済額
  3. 取引の日付
  4. 取引の方法
  5. 約定利率と遅延損害金
  6. 無利息残の記載

この中で過払い金の引き直し計算をするためには、貸付額、返済額、取引の日付の3つの情報が必要です。

取引履歴の開示請求方法

貸金業者によって異なりますが、取引履歴の開示請求方法はインターネット、電話請求、店頭受け取りの3つがあります。

公式サイトから開示請求書をダウンロード、または電話や店頭で開示請求書を取り寄せて身分証明書と一緒に提出することで開示してもらうことができます。

早い業者では1週間程度で開示してもらえますが、長い場合には1ヶ月以上かかることもあります。

なお、取引履歴の開示に手数料を取る場合もあります。アコムやレイクなどの大手消費者金融では無料で開示してもらえますが、オリコなどの信販会社では開示の際に1,000円の手数料がかかります。

なお、取引履歴を取り寄せる際に理由を聞かれることがありますが、この時に「過払い金を調べるため」とは答えないようにしましょう。後述しますが、この時点で「過払い金を調べるため」と答えてしまうと非債弁済という行為になることがあり、後々の交渉で不利になることがあります。

貸金業者には取引履歴を開示する義務がある

平成17年7月19日の最高裁判所では次のような判決が出ました。

貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。

判決ですので難しく書いていますが、趣旨は、貸金業者には取引履歴を開示する義務があるということが書いてあります。

この判決後、改正貸金業法にも取引履歴の開示義務が明記されるようになりました。

現在では取引履歴を請求すればほとんどの業者で開示してくれるはずです。

取引履歴の開示だけではブラックリストには載らない

過払い金請求にはデメリットやリスクもあります。取引履歴の開示請求をすることでブラックリストに載るのではないかと心配される方もいるようですが、取引履歴の開示だけではブラックリストに載ることはありません。

ブラックリストに載るのは返済の遅れが続いたり、債務整理を行ったりした時です。

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取引履歴開示の際の注意点

取引履歴開示そのものにはデメリットは無く、簡単に行うことができますが、取引履歴を開示してもらう時には次の内容にご注意ください。

  • 取引履歴が途中から始まっている場合
  • 取引履歴開示請求では消滅時効は中断しない
  • 取引履歴開示の際にゼロ和解を提案された場合
  • 借金返済を延滞している場合
  • 非債弁済の主張をされる場合
  • 契約書や領収書が手元にない場合
  • どこから借りたのかを覚えていない場合
  • 返済が終わっていない場合の弁護士・司法書士による開示

取引履歴が途中から始まっている場合

貸金業者には取引履歴の開示義務がありますが、開示された取引履歴にはすべての取引が載っていないこともあります。

これは貸金業者ごとに取引履歴の保管期限が異なっており、取引履歴の保管義務は10年間となっているためです。

多くの貸金業者では取引履歴を確認することで過去の取引をすべて確認することができますが、以下の業者では古い取引履歴がないことがあります。

貸金業者ごとに公開できる取引履歴の期間は異なる
貸金業者公開される取引履歴
セゾン1991年5月以降
ニコス1992年7月以降
レイク1993年5月以降
オリコ1993年以降
エポス1997年以降

上記の取引履歴の公開期間は一例です。他の貸金業者にでも一部しか公開しないこともありますし、ニコス(三菱UFJニコス)が発行するカードでもニコスカードの取引履歴は1995年1月以降しか公開しないなど、サービスにより取引履歴での公開期間が変わることがあります。

取引履歴に未開示の部分があると過払い金の引き直し計算を行うことができず、過払い金請求ができなくなりますので、このような場合には推定計算という方法で未開示の部分を推定して計算することで過払い金請求を行うことができるようになります。

しかし、過払い金の推定計算を個人で行うことは難しく、自分で取引履歴を開示したとしても未開示の部分がある場合には弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。

取引履歴開示請求では消滅時効は中断しない

過払い金請求には最後の返済日から10年という消滅時効が存在します。そして、時効の成立を阻止するために過払い金請求を行うという方法があるのですが、取引履歴の開示請求だけでは時効の中断をすることができません。

古い取引の場合には時効に差し掛かっている案件も多く、取引履歴には開示に時間がかかることもあり、取引履歴を取り寄せている間に時効になってしまったというケースもあります。

過払い金請求を行うことで時効を中断することができますので、既に借金を完済している方や現在は返済中でも過去に1度でも完済したことがあるという方は過払い金請求を検討した方がよいでしょう。

取引履歴開示の際にゼロ和解を提案された場合

取引履歴の開示請求をする際に、稀に貸金業者からゼロ和解の提案をされることがあります。

ゼロ和解とは、現在の借金を0円にするという内容で互いに債権債務なしにする和解のことです。

借金返済中の方は借金が0円になるので一見すると得をするように思えますが、貸金業者がゼロ和解を提案するのはゼロ和解した方が貸金業者側にとって得をする場合であり、多くの場合で過払い金が発生しています。

一度ゼロ和解をしてしまうと、後から過払い金請求をすることは極めて困難になります。

もしゼロ和解を提案された場合には相手の提案に乗らず、弁護士や司法書士に相談しましょう。

借金返済を延滞している場合

借金を返済中であっても取引履歴を開示してもらうことはできます。しかし、借金返済を延滞中に取引履歴の開示請求で電話をすると、延滞理由を聞かれたり、返済をするように求められたりすることがあります。

借金をしている以上、返済をするのは当たり前ですが、借金の返済と取引履歴の開示請求は別問題です。返済についてはいつまでにどうすると答え、取引履歴を開示してもらうようにしましょう。

なお、借金返済が苦しい場合には弁護士や司法書士に依頼することで借金の督促を止めることができます。お客様の状況次第で過払い金請求できるのか、任意整理などの債務整理がよいのかは変わってきます。

杉山事務所は相談無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

非債弁済の主張をされる場合

借金返済中に取引履歴を請求し、後日、過払い金請求をする場合に貸金業者から非債弁済(ひさいべんさい)を主張されることがあります。

非債弁済とは、民法第705条にある、債務がないことを知りながら返済をした場合には返還を求めることができない弁済のことです。

借金がないことをわかった上で返済をした場合には後から返還請求できないのが非債弁済です。

第705条
債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。

通常は非債弁済を主張されることはありません。

しかし、借金返済中に自分にどのくらいの過払い金があるのかを調べるために取引履歴を取り寄せ、過払い金で借金を完済できるのかどうかを確認してから、時期を見て過払い金請求をするということがあります。

この過払い金請求をされた際に「過日、取引履歴を取り寄せたことにより、過払い金があったことを知っていたはず」と主張されることが稀にあります。

現在のところ裁判でこの主張が認められたケースはありませんが、裁判の結果次第では今後どうなるのかわかりません。

不用意に取引履歴を取り寄せるのではなく、弁護士や司法書士に相談することがよいでしょう。

契約書や領収書が手元にない場合

お金を借りた際の契約書や返済した時の領収書などがない場合であっても取引履歴の開示請求は可能です。

貸金業者には取引履歴の開示請求をされた場合には開示しなければならない義務があるので、口頭による本人確認ができた場合には書面がなくても取引履歴の開示ができることがあります。

開示請求書に書面が必要な場合もありますが、開示請求書の書面は簡単なものが多く、手元に書類がない場合であっても取引履歴は問題なく取得できます。

どこから借りたのかを覚えていない場合

借金をしたのがあまりにも古く、どこからお金を借りたのかを覚えていない場合、貸金業者の合併のためどこに取引履歴を請求してよいのかが分からないという場合もあります。

預金通常の履歴をさかのぼるという手段もありますがJICC、CIC、KSCなどの信用情報機関に問い合わせることで過去の取引であっても調べることが可能です。

その他にも、杉山事務所のように過払い金請求の経験が豊富な事務所であれば、キャッシュカードの色やなんとなくの会社名から現在の開示請求先を特定することができることもあります。

返済が終わっていない場合の弁護士・司法書士による開示

取引履歴を開示するだけであればデメリットはありませんが、借金返済中に弁護士や司法書士に依頼して取引履歴の開示をしてもらう場合には注意が必要です。

借金返済中であっても過払い金請求はできますが、取引履歴を確認するまではいくら戻ってくるかはわかりません。弁護士や司法書士に依頼して取引履歴開示請求と同時に債務整理を受任した旨を受任通知として貸金業者に送ってしまうと貸金業者側からは債務整理をされたということで信用情報機関に報告する(ブラックリストに載る)ことがあります。

結果的に過払い金が戻ってくることになれば債務整理を行わないことになりますのでブラックリストからは抹消されますが、「信用情報に悪影響がないなら過払い金請求をする」と思っていたのにブラックリストに載ってしまったということになる可能性があります。

とはいえ、債務整理すべき状態を放っておいた結果、返済不能になり自己破産せざるをえないという人もいる以上は一度弁護士や司法書士に相談するべきです。

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取引履歴が開示されたら次に何をすべきか?

取引履歴が開示されたら次に行うのは過払い金の引き直し計算です。

取引履歴には取引日(借入日、返済日)と取引金額(借入額、返済額)が掛かれています。いつ借りて、いくら返したのかが分かれれば当時の金利を計算することができます。

利息制限法の上限金利は借金額により15%~20%と変わることが定められていますので、この金利を超過した分は払いすぎたお金(過払い金)となります。

利息制限法の上限金利
借入額上限金利
10万円未満20%
10万円以上100万円未満18%
100万円以上15%

2008年頃までは29.2%に近い金利で返済していた可能性が高く、正しい金利に計算しなおすことで発生している過払い金の金額を出すことができます。

ただし、借金の返済が遅れ、遅延損害金を支払っている場合にはご注意ください。

遅延損害金は利息制限法の上限金利の1.46倍まで取って良いことになっていますので、遅延損害金まで考慮した上限金利は次のようになります。

遅延損害金を支払った場合の上限金利
借入額上限金利
10万円未満29.2%
10万円以上100万円未満26.28%
100万円以上21.9%

このように過払い金の引き直し計算は複雑で、計算を間違えることで取り戻せる金額が少なくなることがあります。

過払い金請求には時効もございますので、お早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。

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貸金業者が取引履歴を開示してこない場合の対処法

貸金業者には取引履歴の開示義務があります。

しかし、貸金業者によっては個人からの開示請求を意図的に遅らせたり、開示をしないという手段をとってくることもあります。

このような業者に対しては再度開示請求を行い、それでも開示しない場合には行政指導や行政処分を行ってもらう必要があります。

再度、開示請求を行う

一度開示請求を行い、開示されなかった場合でも再度開示請求を行うことで開示されるというこはあります。

しかし、そもそも取引履歴を開示しない業者の場合には再度開示請求を行ったとしても効果がないこともあります。この場合には行政処分を求めることになります。

行政処分を求める申告

金融庁・財務局・都道府県に寄せられた貸金業者に係る苦情等(苦情、相談・照会)件数によると取引履歴の開示(帳簿の開示)は平成29年で24件、平成30年で25件の苦情件数がありますので、少数とはいえ近年でも取引履歴が開示されないことはあります。

取引履歴の開示請求を行っても開示してこない業者に対しては、行政指導を求めることができます。

これにより貸金業者を監督する官庁から取引履歴を開示するように指導してもらうことができます。

監督する官庁は都道府県知事か財務局になるのですが、どちらになるのかはどこに登録しているのかは貸金業者のホームページなどにある関東財務局長(〇)第〇〇号や東京都知事(〇)第〇〇号のような記載からわかります。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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