過払い金の消滅時効と時効後の対応方法

過払い金の時効は10年です。

そのため、10年を過ぎると過払い金があってもお金を取り戻せなくなります。ただし、請求期限は借金を完済してから10年ですので現在返済中の方や完済から10年経っていない方は今からでもお金を取り戻せます。

司法書士法人杉山事務所が、いつから数えて10年なのか(時効の起算点)、時効を更新(中断)する方法、10年を過ぎたり時効になっていてもお金を取り戻せる方法、民法改正による時効の変化をわかりやすく解説いたします。

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過払い金の時効は完済から10年

最終取引日(完済した日)から10年経過すると過払い金の返還手続きができなくなる 最終取引日(完済した日)から10年経過すると過払い金の返還手続きができなくなる

過払い金には消滅時効があり、最終取引日から10年が経過するとお金を取り戻せなくなります。これは過払い金請求が「不当利得返還請求」にあたるためです。不当利得返還請求は民法166条にて10年行使しないと消滅すると定められています。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

民法166条1項の「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」については民法の改正により追加されたものですので後述いたします。

時効の起算点について

時効の起算点(いつから数えて時効になるか)については、今まで2つの考え方がありました。

  • 過払い金が発生した時を起算点とする
  • 取引終了時を起算点とする

過払い金が発生した時を起算点とすると2010年までに発生した過払い金は2020年の時点で取り戻せないことになります。これは貸金業者(債権者)に有利な考え方です。

対して取引終了時を起算点とする場合には過払い金がいつ発生していたとしても2010年までに発生した過払い金は2020年の時点でも取り戻すことができます。これは消費者(債務者)に有利な考え方です。

最高裁判所は平成21年(2009年)に取引終了時を起算点とすると消費者に有利な判断しています。ここでいう取引終了時は借金の完済日となります。

そのため、借金の完済日から10年が過払い金請求の時効となるのです。

返済中であれば請求期限はない

時効の起算点が完済後ということは、借金返済中の方には過払い金の時効は関係ない。つまり、借金返済中の場合には請求期限はない(いつでも請求できる)ということになります。

厳密には借金返済中でも最後に借り入れをしてから1度も返済をしなければ時効になりますが、ほとんどないケースですので割愛いたします。

広告メディアによる10年の誤解

過払い金請求の時効は完済後10年ですが、現在でも次のような誤解があります。

  • 借金をしてから10年
  • 過払い金が発生してから10年
  • 2006年の最高裁判決から10年(2016年で時効)
  • 2010年の法改正から10年(2020年で時効)

上記は4つは全て誤りですが、誤解が生じた原因の1つには広告メディアにもあります。過去には大手事務所が2006年の最高裁で過払い金請求ができるようになってから10年後の2016年(平成28年)に請求期限が来ると思わせるようなCMを流したがあります。

しかし、請求期限は完済後10年ですので既に諦めている人であってもお金を取り戻せる可能性があります。

時効10年を更新(中断)する方法

借金を完済した人の中には完済後10年になりそうな人もいるはずです。このような方は時効になる前に手続きをする必要がありますが、時効を更新(中断)する方法もあります。

次のどちらかの方法を取れば時効が更新されますので請求期限を延ばすことができます。

  • 裁判による請求
  • 裁判外の請求

裁判による請求

裁判により過払い金請求(訴訟の提起または支払い督促)をすることで裁判所が受理した時点で時効を止めることができます。そして、裁判が確定すると進行していた時効が0に戻ります。

ただし、裁判による請求を行う場合には自分の利益を守るためにも必ず弁護士や司法書士に相談してから行うようにしてください。

訴訟の提起

通常訴訟では請求額が140万円以上の場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所で行います。

請求額が60万円以下の場合には少額訴訟を簡易裁判所に申し立てることができ、1回の裁判で終了し、その日のうちに判決が出ます。ただし、少額訴訟を起こしても貸金業者からの申し立てがあれば通常訴訟に移行することになります。

請求額管轄裁判所訴訟の形態
60万円以下簡易裁判所少額訴訟
140万円以下簡易裁判所通常訴訟
140万円以上地方裁判所通常訴訟

支払い督促

支払督促とは、裁判所から貸金業者へ過払い金の支払い命令である督促状を出してもらう手続きです。貸金業者の住所を管轄する簡易裁判所にする必要がありますが書類審査のみで裁判所に行く必要がありません。

督促状を受け取った貸金業者から2週間以内に異議申し立てがあった場合には通常訴訟へ移行しますが、ほとんど場合で異議申し立てをしてきますので結果的に裁判をすることになります。

訴訟外請求

裁判外の請求とは貸金業者に過払い金の内容証明で請求書を送るということです。請求を送ってから6ヶ月の間は時効が止まります。この6ヶ月の間に裁判所へ訴訟の申し立て(裁判による請求)をおこなうことで消滅時効の成立を回避できます。

取引履歴の開示請求では時効は止まらない

過払い金請求をするためには先に過払い金がいくら発生しているのかを調べるために取引履歴の開示請求をする必要があります。取引履歴を確認してから発生額を計算をすることになりますが、この取引履歴の開示請求だけでは時効は止まりません。

時効と止めるためには過払い金の請求をする必要がありますのでご注意ください。

完済から10年以上経っていても請求できるケース

借金の完済から10年以上経っていても次の場合にはお金を取り戻せることがあります。

  • 完済と返済を繰り返している場合
  • 貸金業者の不法行為があった場合

完済と返済を繰り返している場合

10年以上前の借金であっても過払い金請求ができるケースもある 10年以上前の借金であっても過払い金請求ができるケースもある

同じ貸金業者から完済と借入を繰り返している場合には、最初の完済から10年以上経っていてもお金が取り戻せることがあります。

一度借金を完済すると10年で時効ですが、完済した後に同じ貸金業者からお金を借りた場合には1つの取引(一連取引)と見なされることがあります。一連取引と判断されれば10年以上経過していても請求は可能です。

ただし、次のような場合には分断した取引と判断されてお金が取り戻せなくなることがあります。

  • 完済した借金と次の借金の空白期間が1年以上経過している場合
  • 借り入れの際に新しく契約書を交わしている場合

取引が一連なのか、分断なのかを個人で判断することは非常に難しいため、必ず弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。

クレジットカードのキャッシングは一連となりやすい

クレジットカードのキャッシングの場合、一連取引と判断されやすいです。ただし、リボ払いではなく1回払いをしていた場合には中断期間が短くても高い確率で分断取引と判断されます。

消費者金融では1年以内なら一連になりやすい

消費者金融からの借金の場合、空白期間が1年以内であれば一連取引と判断されること多いです。ただし、裁判官によって判断基準が異なるため、空白期間1年は目安としてお考えください。

貸金業者の不法行為があった場合

貸金業者の不法行為があった場合とは以下のようなものになります。

  • 暴行や脅迫による返済の催促
  • 法的根拠がないことを知っていながらあえて請求する
  • 毎日の電話や嫌がらせによる取り立て行為
  • 午後9時~午前8時の間の電話や訪問
  • 3人以上での訪問

法的根拠がないことを知っていながらあえて請求するというのは、過払い金が発生していて支払い義務がないことを貸金業者が知っているにも関わらず請求し続けるの行為が該当します。

不法行為があった場合の時効は「最終取引日からの10年」ではなく「過払い金の発生を知った時から3年」に延びます。

貸金業者の不当行為の事例

平成20年2月27日名古屋高等裁判所の判例では、過払い金が発生しているため本来は支払うべき借金がないにもかかわらず請求を続けたとして不法行為と判断されています。

このように過払い金が発生していたのに請求を続けられた場合には「法的根拠がないことを知っていながらあえて請求する」に該当し、過払い金の発生を知った時から3年が時効となります。

過払い金の時効についての特記事項

過払い金の時効についての特記事項としては次の4点があげられます。

  • 時効の成立後でも借金減額できるケース
  • 時効の成立に関わらず取り戻せなくなるケース
  • 貸付停止措置と消滅時効
  • 民法改正による過払い金請求の時効の変化

時効の成立後でも借金減額できるケース

過払い金の時効は完済後10年ですので時効が成立すればお金を取り戻すことはできなくなります。しかし、時効後であっても現在返済中の借金と相殺ならできることもあります。

借入と完済を繰り返している貸金業者に対して最初の借り入れ時に発生した過払い金を次の借り入れに充当することを否定された場合、予め「充当できないときには相殺する」と裁判で主張しておけば、過払い金は次の借り入れの借金と相殺することも可能です。

少しわかりにくい話ですが、時効後であっても過払い金を使って借金を減らすことができる可能性があるということです。

時効の成立に関わらず取り戻せなくなるケース

時効になっていない場合でも貸金業者が倒産してしまうと請求先がなくなるためお金を取り戻せなくなります。

倒産した会社に資産があれば配当を受けることはできますが、過去の倒産時の配当率は高い場合でも3%程度(武富士やSFコーポレーションの場合)です。つまり、100万円の過払い金があったとしても3万円しか戻ってこないということです。

貸金業者の経営状況によっては返還する過払い金額を下げてくることもありますので、「時効になっていないのでまだ請求しない」ではなく、早い段階で弁護士や司法書士に相談して請求すべきでしょう。

貸付停止措置と消滅時効

過払い金の時効起算点は最後の取引日ですのでほとんどの場合で完済日になりますが、裁判の場合にはいつが最後の取引日になるのかが争点になることがあります。

借金の返済遅延が原因で貸付が停止された場合、貸付停止措置日を起算点と主張する貸金業者もありますので注意が必要です。

この主張は最高裁判所の判決で新しい借り入れが見込まれる場合に取引終了時(最後の取引日)から進行するとされていたためです。

しかし、諸々の事情を考慮した上で貸金業者の主張を認めた事例はありますが、現在の判例では貸付停止措置がとられているというだけで消滅時効が進行すると判断されることはありません。ただし、貸付停止措置を争点にされることで裁判の長期にわたる可能性があります。

民法改正による過払い金請求の時効の変化

2017年5月26日に改正民法が成立し、6月2日に公布、2020年4月1日に施行されました。この改正民法では消滅時効の規定が変わり、次の2つのうち期限の早い方で時効が成立することになります。

  • 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年
  • 権利を行使することができる時から10年

改正民法施行前(2020年4月1日よりも前)に完済したことで発生した過払い金については「最後の返済日から10年」という従来の消滅時効が適用されますが、改正民法施行後(2020年4月1日よりも後)に完済したことで発生した過払い金は「権利を行使することができることを知った時から5年」が該当することがあります。

民法の改正により過払い金請求の時効が短くなることがありますが、必ず短くなるというわけではありません。

民法改正後に取引履歴開示をするリスク

2020年4月1日の改正民法施行後の過払い金請求の時効は「権利を行使することができることを知った時から5年」です。これは裁判で争ったときに貸金業者が「債務者が権利を行使できると知った時から5年が経過」したことを証明できれば時効が主張できることになります。

そのため、民法改正後に取引履歴の開示をすると、その時点で過払い金請求権の行使をできることを知ったと主張してくる可能性が考えられます。しかし、最高裁判所第一小法廷平成21年1月22日判決により過払い金充当合意がある借金の返済中であれば借金を完済した日が起算点になりますので時効には該当しません。

ただし、借金返済中であっても過払い金が高額な場合には「本当は借金がない」ことを知ったうえで返済を続けているので過払い金の返済義務がない(非債弁済)という主張をしてくる可能性は考えられます。

どちらにしても過払い金の引き直し計算が必要になることは間違いありませんので弁護士や司法書士に相談することをおすすめいたします。

代表司法書士杉山一穂近影
  • 司法書士法人杉山事務所
  • 代表司法書士 杉山一穂
  • 大阪司法書士会 第3897号
  • [プロフィール]

大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。

杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。

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