過払い金の計算は自分でもできますが、正確さを求めるなら弁護士か司法書士に依頼するのがおすすめです。
過払い金の計算にはあらゆる取引情報が必要です。たとえば取引日、返済額、金利、取引期間などが挙げられます。他にも取引ごとの詳しい情報を加味して過払い金を計算します。貸金業者との交渉時にはあらゆる条件を加味して計算した正しい過払い金額を提示する必要があるのです。
そこで本記事では過払い金の計算方法や注意点についてご説明します。自分の過払い金が一体どれほどあるのか知りたい方や過払い金請求を検討している方は必見です。なお司法書士法人杉山事務所では過払い金計算を無料で承っております。ぜひお気軽にお問合せください。
過払い金を計算する前にそもそも自分には過払い金があるのかどうか確認する必要があります。ではどのような条件に当てはまれば過払い金があると判断できるのか、簡単に見ていきましょう。
2010年6月18日よりも前に借り入れをした人は過払い金が発生している可能性があります。
過払い金は、現在の法定金利よりも高い金利で借り入れをした場合に発生するものです。2010年6月18日に利息制限法と出資法という法律が改正されました。これにより上限金利が引き下げられたのです。現在の法定金利は以下のとおりです。
借入金額 | 法定金利 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上~100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
過去には29.2%が貸金業の上限金利でしたが、法改正後は借入額に応じて15%~20%が上限金利と定められました。つまり現在の上限金利である15%~20%以上の利息で過去に取引をした人は過払い金の対象となります。
以下の条件に当てはまる場合は過払い金が発生しません。
2010年6月18日には利息制限法と出資法が改正されグレーゾーン金利は撤廃されました。そのため同日以降の取引には現在の利息制限法が適用されています。つまり法定利息内の取引なので過払い金は発生しません。
ただし2010年6月18日以前の取引だとしても、取引以前に貸金業者が金利を法定金利内に引き下げていた場合は過払い金請求の対象にはなりません。
銀行や信用金庫の取引は金利が低いため、過払い金が発生する可能性はありません。たとえば銀行や信用金庫における以下のような借り入れも過払い金の対象外です。
借入額が大きいケースが多く利息も高いように思えますが、過払い金は発生していないのです。
もとより法定金利内で貸付けをしていた貸金業者もあります。たとえば以下の貸金業者との取引の場合は2010年6月18日以前の取引でも過払い金は発生しません。
なお、JCBは一括払いで返済している場合のみ過払い金が発生している可能性があります。分割払いの場合は過払い金は発生しません。
過払い金の請求は最終取引から10年が経過すると時効を迎えます。つまり2010年6月18日より前の取引があったとしても完済から10年が経っていれば時効です。時効になると過払い金を請求することはできません。
奨学金や社会福祉協議会からの借り入れに過払い金が発生することはありません。いずれも支払いが苦しい人に向けた貸付けであるため低金利なのが特徴です。
過払い金の計算方法は以下のとおり4種類あります。
しかし、この中で間違いなく確実に過払い金額を計算できるのは弁護士・司法書士に依頼するという方法だけでしょう。大まかな金額を把握するための計算なら自分でできます。しかし、過払い金請求するとなると取引の状況を加味した正確な計算が必要です。
4種類の方法をご紹介しますが、過払い金請求を検討している場合は司法書士に計算を依頼することをおすすめします。
最も簡単なのが表を用いる方法です。借入額と取引期間によって大まかな過払い金額が把握できます。ご自身の借入額と取引期間を当てはめて確認してみてください。
借入額 | 取引期間 | 目安となる過払い金 |
---|---|---|
50万円 | 1年 | 55,000円 |
50万円 | 5年 | 280,000円 |
50万円 | 10年 | 550,000円 |
100万円 | 1年 | 110,000円 |
100万円 | 5年 | 550,000円 |
100万円 | 10年 | 1,100,000円 |
200万円 | 1年 | 220,000円 |
200万円 | 5年 | 1,100,000円 |
200万円 | 10年 | 2,200,000円 |
ただし借入額が必ずしも上記の表にある額とは限りません。取引した貸金業者によって金利は異なります。また、返済の滞納や途中の追加借り入れなどによっても過払い金の額は大きく変わるものです。
上記の表はあくまで詳しい計算をする前の目安としてご活用ください。
表を用いる計算より詳しい額が手計算で算出できる方法をご紹介します。比較的簡単な計算方法ではありますが精度は概算程度のものです。簡単に大まかな過払い金額を知りたい方はご活用ください。この計算に必要な情報は以下のとおりです。
なお、金利が何パーセントか分からない場合は以下の計算で求められます。
金利(%)=利息(円) / 借入金額(円) × 借入期間(年)
たとえば100万円の借金に対し、1年間で20万円の利息がついた場合の金利は以下のとおりです。
20万円 / 100万円 × 1年 = 0.2(20%)
では借金を完済した場合と返済中の場合に分けて計算方法を見ていきましょう。
すでに借金を完済している場合の過払い金計算方法は以下のとおりです。
過払い金 = (実際に払った金利 – 法定金利) × 借入金額
100万円の借金に対して1年間の返済期間で25%の金利がついたとします。100万円の借金に対する法定金利は15%なので計算式は以下のとおりです。
( 0.25 – 0.15)× 100万円 = 10万円
この場合の過払い金は10万円と計算できました。実際の金利と法定金利には10%もの差があったため、100万円の10%にあたる額が過払い金として戻ってくるという計算です。
借金を返済中の場合は計算が複雑になります。まずは以下の式で年間でいくらの過払い金が発生しているのか計算します。
1年間の過払い金 = (実際に払った金利 – 法定金利) × 借入金額
先ほどの例と同様、100万円の借金に対して1年間の返済期間で25%の金利がついたとすると、1年間で発生する過払い金は以下のとおりです。
( 0.25 – 0.15)× 100万円 = 10万円
次にこの借金における累計の過払い金を計算します。計算式は以下のとおりです。
1年間の過払い金 × 借入期間 = 過払い金累計
ここでは仮にこの借金を5年間にわたって返済しているとしましょう。すると5年間で累計した過払い金は以下のとおりです。
10万円 × 5年間 = 50万円
最後に現在の借入残高と累計した過払い金の差額を計算します。計算式は以下のとおりです。ここでは現在20万円の債務残高があるとしましょう。
累計した過払い金 – 債務残高 = 過払い金
50万円 – 20万円 = 30万円
これにより現時点で取り戻せる過払い金は30万円相当であることが分かりました。
ただしこれはあくまで簡易的な計算方法です。実際は数年にわたり分割払いすると元金が減り年間の利息も変動するはずです。また途中で返済が滞り、遅延損害金が発生したケースも考えられます。
過払い金請求をする場合はこうしたケースごとの背景も考慮して計算しなければなりません。上記の計算方法は自分で過払い金を概算するための参考としてご活用ください。
エクセルと専用ツールを用いて計算する方法もあります。この方法は手間がかかるものの、先ほどご紹介した手計算よりもかなり精度が高い計算方法です。自身で過払い金請求をしようと検討している方はこの計算方法を用いると良いでしょう。エクセルでの計算に必要なものは以下のとおりです。
取引履歴は貸金業者から直接取り寄せます。電話で請求できる場合が多いですが、具体的な取得方法は貸金業者により異なります。一般的に窓口では最短2時間程度、電話やインターネット上の請求では2週間から2ヶ月程度の時間を要するとされています。詳しくは各会社のお問い合わせ窓口などでご確認ください。
過払金専用の計算ツールは無料でダウンロードできるものがあります。特におすすめなのが名古屋式利息計算ソフトです。
名古屋消費者信用問題研究会が無料で提供している利息計算ソフトで、ダウンロードすればすぐに計算が始められます。具体的な計算方法については次の章で詳しくご紹介します。
過払い金を無料で計算してくれる司法書士事務所は多くあります。司法書士法人杉山事務所もその1つです。相談から過払い金計算まで無料で承っています。
自分で過払い金計算するのが難しいと感じる方や、過払い金請求をふまえて正確な金額が知りたい方は司法書士への依頼がおすすめです。取引の状況を加味したうえで正しい過払い金額を計算してもらえます。
ちなみに司法書士事務所に過払い金請求まで依頼すると費用がかかります。支払うお金は着手金や基本報酬、成功報酬、実費などです。しかし、これらの費用さえ払えれば自分で手間をかけずに過払い金を取り戻せます。そのため非常に楽な気持ちでいられるでしょう。
エクセルを用いた過払い金用ツールでの計算方法をご紹介します。計算を始める前には過払い金用ソフトをダウンロードしておきましょう。ダウンロード後、ファイルを開いてデータを入力していきます。
まずは自身の借金に対する法定上限金利を入力します。上限金利は以下のとおり借入額によって変動するので自身の借金に対応する金利を入力しましょう。
借入金額 | 法定金利 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上~100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
名古屋式のソフトでいうと上限金利を入力するのはE列7行目の「利率」にあたるセルです。
20%なら「0.2」という形式で入力していきます。E列7行目のセルを入力すれば、それより下の行は自動で同じ金利が反映されるようになっています。
続いて取引履歴を参照しながら取引内容をソフトに打ち込んでいきます。打ち込む内容は以下の3点です。
取引日とは借入れもしくは返済をした日のことです。借入額は借り入れをした合計金額を指します。返済額は1回の取引で返済した額です。計算ソフト上では「弁済額」と記載されることもあります。
シートの上から日付が古い順に上記のデータを入力していきます。このとき計算式の入っている「未払い利息」や「過払い利息」の行には入力をしないように気を付けましょう。取引履歴のデータが転記できるとソフトが過払い金を自動計算します。
このときソフトが自動計算するのは以下の項目です。
つまり法定金利に対してどれほど多くの利息を支払っているかが自動計算により分かります。
過払い金があるかどうかは「残元金」の行を確認すると分かります。残元金とは借入残高を示す言葉です。この残元金がマイナス表示になっていると過払い金のある証拠です。名古屋式エクセルソフトの場合過払い金があると残元金が赤字でマイナス表示されます。
これはつまり法定金利を超えて返済をしているということです。最も新しい取引日における残元金が取り戻せる過払い金の額ということになります。
完済している借金なら最終的にこの残元金が「0」になる必要があります。また完済していない借金なら本来プラス表示で残元金が残っているはずです。しかし完済していないにも関わらず残元金が赤字になっている場合は、高い金利によりすでに本来の借金が完済できているということです。赤字の金額は過払い金として取り戻せます。
自分で過払い金計算する方法をご紹介してきましたが、以下に該当する方は計算を司法書士に任せた方が良いでしょう。
ではなぜこれらに当てはまる場合は自分で計算しない方が良いのかその理由を見ていきましょう。
過払い金請求の時効が近い取引については司法書士に手続きを委任した方が良いでしょう。自分で過払い金計算をするには時間がかかります。自分で貸金業者への交渉まで行う場合、書面作成や交渉中に時効を迎えてしまうリスクも。時効を迎えるとそれ以降は一切の過払い金請求を行えなくなってしまいます。
一方、司法書士に依頼することにより時効から逆算してスピーディーに手続きを進めてくれるはずです。無駄な時間をかけずに計算から交渉まで済むでしょう。
焦らず確実に過払い金請求ができるので、時効が近い場合は早急に司法書士へ依頼することをおすすめします。
同じ貸金業者から何度も借り入れをしていた場合も司法書士への相談をおすすめします。一般的に過払い金請求の対象となるのは2010年6月18日よりも前の取引です。そして最終取引から10年以上が経過すると時効を迎えます。
しかし、過払い金請求の対象となる取引の前に何度も取引があった場合は10年以上前の取引であっても一連の取引として過払い金請求の対象となる場合があるのです。つまり、本来時効と判断されるべき取引も、直近の取引と長い間が開いていなければ一連の取引とみなされ過払い金請求できることがあります。
一連の取引とみなされるかどうかは相手の貸金業者や交渉の仕方によって異なります。たとえば半年以内なら確実に一連の取引として過払い金請求できるとは断言できないのです。
この場合の見極めは経験を積んだ司法書士の目線が必要です。また、できる限り多くの過払い金を取り戻すためにも交渉の仕方や裁判においての主張が重要となります。
貸金業者は一定の期間が経過した取引履歴を処分することがあります。これにより取引履歴を請求してももらえないというケースがあるのです。この場合は「推定計算」という手法を用いて過払い金を計算します。
推定計算とは債務者の通帳履歴や現存している限りの取引履歴などから過払い金を推定して計算する方法です。推定計算をするには専門的な知識が必要となるため司法書士への依頼をおすすめします。
また、取引履歴があるにも関わらず一部しか公開してもらえない場合があります。これは貸金業者があえて一部の取引履歴を隠しているケースです。このような場合も司法書士が間に入って請求をすれば欠けのない取引履歴を請求できます。
貸金業者から債務者本人に対して和解案を提示してくることがあります。この場合は和解案に応じる前に司法書士に相談しましょう。実は貸金業者からの和解案を受け入れるとその後過払い金請求ができなくなります。
多くの場合、貸金業者は過払い金請求されることを防ぐために和解案を提示します。なお、その和解案では本来取り戻せる過払い金よりも少ない額が提示されていることがほとんどです。つまり和解案にそのまま承諾するよりも、過払い金請求した方がお得ということになります。
和解案への返答やその後の交渉は一般的な過払い金請求とは異なるイレギュラーなものになるため、司法書士に相談することをおすすめします。
返済には支払期日が設けられており、期日を過ぎると「遅延損害金」という損害賠償金が課されるケースがあります。遅延損害金の支払いを求められている、またはすでに支払った場合は一度司法書士に相談することをおすすめします。
すでに遅延損害金を支払っている場合、その分の金額は過払い金計算に含むことができません。なぜなら、遅延損害金は利息でなく損害賠償金に区分されるからです。そのため一般的な過払い金計算よりも複雑な方法を必要とする可能性があります。
また返済を現在も滞納している場合、過払い金の計算において貸金業者から「遅延損害金利率」の適用を主張されることがあります。これは支払いが遅延したことにより法定上限金利の最大1.46倍の利率が適用できるというものです。
しかし、この主張を受け入れる必要はありません。交渉次第では当初どおりの過払い金を請求できるのです。
このように返済を滞納したことがある場合は過払い金計算が複雑化するほか、貸金業者から過払い金計算に対して反論される可能性があります。このような事態に債務者本人が対応するのは難しいでしょう。スムーズに過払い金を取り戻すためにもすみやかに専門家に相談するのがおすすめです。
自ら過払い金を計算する方もいるでしょう。最後に自分で過払い金計算をする際の注意点をご説明します。
過払い金を計算するには取引履歴の取得が必須です。しかしこのとき、窓口や電話で「過払い金請求に使う」という旨を言わないようにしましょう。特に返済中の場合は要注意です。
なぜなら和解交渉や裁判で「債務者は過払いだと分かっていたにも関わらず返済を続けていた」と反論されてしまうからです。過払い金請求をする旨を貸金業者に知られてしまうと後の交渉が不利になる可能性があります。
取引履歴の用途を聞かれた場合は「過去の取引の記録が見たいです」と伝えれば問題ありません。
取引履歴は手元に届くまで時間がかかる場合があります。時効が近い、いち早く過払い金を取り戻したい場合は窓口で直接取引履歴を請求すると良いでしょう。会社によって差はあるものの窓口なら最短2時間程度で発行してもらえます。遅くても翌日受け取りまたは郵送になるでしょう。
一方インターネットや電話、郵送で請求すると時間がかかります。届くまでの期間はおよそ2週間から2ヶ月程度です。それ以上かかることも場合によってはあるかもしれません。そのため窓口以外で取引履歴を請求する際は十分に余裕を持って手続きしましょう。
自分で過払い金の計算から請求まで行う場合は計算間違いがないよう入念に確認しましょう。請求した過払い金が間違っていると自分が不利になるばかりか、交渉の長期化を招いてしまいます。
少しでも不安がある場合は司法書士に相談することをおすすめします。
インターネット上でよく見かける過払い金簡易計算ツールの結果は参考値として考えましょう。特に借入額と借入期間だけを入力して過払い金を算出するようなツールは、非常に精度が低いので計算結果をあてにできません。
ましてや過払い金請求することをふまえているなら、エクセルの過払い金専用ツールできちんと引き直し計算する必要があります。
大学卒業後就職するも社会貢献できる仕事に就きたいと考え、法律職を志し、司法書士試験合格。合格後、大阪市内の事務所で経験を積み、難波にて開業。
杉山事務所では全国から月3,000件を超える過払い・借金問題に関する相談をいただいております。債務整理や過払い金請求の実績豊富な司法書士が多数在籍し、月5億円以上の過払い金を取り戻しています。